コラム

民主党の政調復活は時期尚早だ

2010年02月22日(月)16時52分

 2月17日、民主党の生方幸夫副幹事長や田中真紀子元外相ら衆院議員有志が鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長に対し、「政策研究所」の新設を要請した。昨年9月の政権交代を機に廃止していた政策調査会に代わる党独自の政策立案機関を求めたかっこうだ。

 しかし鳩山も小沢もこの提案を即座に却下。民主党政権に欠点はあるものの、「政策決定の内閣一元化」に真剣に取り組んでいることははっきりさせた。

 政府の役職に就いていない一般議員が、政策面で一定の役割を担いたいと嘆願せざるを得なかったのは、政策決定プロセスを変えようとする鳩山政権の努力が----少なくとも与党の関与を減らすことに関しては----奏功している証拠だ。官僚ではなく政治家主導の「イギリス型政治」への移行で失うものが最も大きかったのが、彼ら一般議員だ。

 自民党政権なら、生方のように4期目も務める議員は政策調査会にポストを得て、政策立案に関わることができただろう。しかし民主党では中堅議員も新人議員も法案成立のために投票し、地元に帰って選挙運動を行う以外はやることがほとんどない。

 自民党議員とは違い、民主党議員には地元への利益誘導政策に関われる機会さえ滅多にない。彼らの政治家としての運命はある程度まで、彼ら自身がほとんど影響力を行使できない政府が握っている。

■官僚の台頭と政府の弱体化を招く

 今後もこのままでいくべきだ。鳩山政権が日本の直面する問題を解決する際には、内閣の背後で独自の政策を作成したり、売り込んだりする議員の存在を心配することなしに政策を策定しなければならない。

 党内に新しい政策立案機関を作れば、アンチ鳩山政権の官僚に情報をリークする手段を与えることになる。これは内閣を弱体化させ、民主党議員の分裂も招きかねない。鳩山政権が閣僚たちを党の方針に従わせることに苦労している現状を考えれば、政策立案機関の設立は事態をさらに混乱をさせるだけだろう。

 いずれは民主党も党内にシンクタンクを作って、一般議員たちに新たなアイデアを求めて忙しく働いてもらうのが有意義だと考える日が来るかもしれない。だが現時点では、新たに提案された政策決定制度はあまりに不安定な存在だ。党が政策決定を担う役割を取り戻しても、それはトラブルの原因にしかならない。

[日本時間2010年02月19日(金)21時52分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

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