コラム

戦術で勝って戦略で負ける......イスラエル軍事作戦の勝因と限界

2025年06月28日(土)17時56分
イスラエル

イスラエルの攻撃を受けた後のイラン西部アラクの重水炉 SATELLITE IMAGE ©2025 MAXAR TECHNOLOGIES/GETTY IMAGES

<トランプの核施設爆撃に先立つイスラエルのイラン攻撃は、歴史上指折りの情報工作の成功例だ。しかし、イスラエルは戦略的目標を見失っていないか>

イスラエルのネタニヤフ首相は、行動こそが問題の解決策だと考えているようだ。

「(イランが)秘密の計画の下で濃縮ウランの兵器化を進めていることは明白だ。非常に速いペースで前進している」と、ネタニヤフは考えている。そこで6月12日夜、イスラエルは「立ち上がる獅子」作戦を開始した。ネタニヤフの言葉を借りれば、「イスラエルの存続を脅かすイランの脅威を後退させる」ことが目的だという。


今回の軍事作戦は、歴史上指折りの情報工作の成功例と評価できる。しかし、戦術面の成功に目を奪われすぎると、イランの意図が分析できず、イスラエルの戦略上の目的──イランが核兵器を保有せず、イスラエルの存続を脅かさないようにすること──を達成する方法も見いだせない。

とはいえ、まず戦術面から見ていこう。

出発点は、質の高い情報を得ることだった。イスラエルは、イラン軍の司令官と核開発関連の主要人物の所在および核関連施設について、リアルタイムで詳細な情報を入手していた。情報機関の工作員とイラン国内のスパイたちの長年にわたる粘り強い活動に加えて、情報分析官たちが衛星画像や公開情報など全ての情報を丹念に分析した成果である。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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