米中スパイ戦争──在ヒューストン中国総領事館の煙は「21世紀新冷戦の象徴」
閉鎖命令が明らかになった7月22日のヒューストン総領事館 ADREES LATIF-REUTERS
<中国は習近平国家主席の下、2013年頃から対米スパイ活動を活発化させていた。アメリカはなぜ、今になって突然動いたのか>
7月21日にテキサス州ヒューストンの中国総領事館から煙が上がった理由を知りたければ、次の数字に注目してほしい──103、52-40、16、14万8000だ。
アメリカは中国の情報機関が知的財産を盗んだとして同領事館を72時間以内に閉鎖するよう命じた。領事館の職員たちは(そしてもちろんスパイも)米当局が建物に入る前に、機密書類を大急ぎで燃やそうとしたのだ。ますますヒートアップする21世紀の米中冷戦を象徴する出来事だ。
ただし、中国は何年も前からアメリカで精力的に情報収集活動を行ってきた。アメリカはなぜ、今になって突然動いたのか。最大の動機は11月3日の大統領選だ。トランプ大統領は大敗の危機に直面している。投票日はこの記事の執筆時点から見て103日後。間もなく数百万人の有権者が郵送での投票を開始する。
最新の世論調査によれば、トランプは民主党のバイデン前副大統領に52%-40%で後れを取り、伝統的に共和党が強いテキサス州でも負けている。アメリカの実質的な失業率(公式の数字より5ポイントほど高いとされている)は、90年前の大恐慌以来最悪の約16%。失業給付の増額措置は7月末に期限切れとなり、国民の3分の1は家賃の支払いができなくなる。新型コロナウイルスによる死者は14万8000人に達し、最近は毎日1000人以上増え続けている。
このパンデミック(世界的大流行)に対する大統領の反応は、無視することだった。トランプは「いずれウイルスは消え去る」と語り、予定どおり秋に学校での対面授業を再開しようとした。
もちろん、ウイルスはトランプの予言どおりにはならず、米政府の致命的な危機管理上の不手際を白日の下にさらけ出した。そこでトランプは、中国に責任を転嫁しようとした。こうして中国はヒューストンから追い出されることになり、スパイ活動の証拠書類を燃やしたというわけだ。
スパイ戦争の必然的結末
ただし、ヒューストンの中国総領事館で煙を発生させる原因となった数字は、ほかにもある──10、137、50、1200だ。
中国がスパイ行為を働いていることは明らかだ。米中両国は何十年も前から互いにスパイし合ってきたが、中国は習近平(シー・チンピン)国家主席の下、2013年頃から対米情報活動を活発化させた。
FBIのレイ長官は7月7日、中国の活動をアメリカにとって最大の脅威と位置付け、FBIは中国絡みの新たな対スパイ活動を「10時間ごとに」開始していると証言した。2000年以降、公表された中国の情報活動は少なくとも137件。兵器関連または機密扱いの技術の窃盗が絡んだ事例は少なくとも50件ある。
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