コラム

新型コロナウイルスの「不都合な真実」を隠す中国政府の病弊

2020年02月06日(木)17時00分

そんなシステムだから、未知なるウイルスの脅威に気付いた医師たちの口を、反射的に封じてしまう。こんな体制の下では、都合の悪い事実を上司に報告することも難しい。かく言う私もCIA時代に、政治家の意向に沿った報告を上げろというプレッシャーを感じたことはある。だが中国ではそういうプレッシャーがはるかに強い。

私のカウンターパートだったMSSのスタッフも中国政府の役人も、たいていは政府のため、国のために正直に働いている。情報機関の人間も一般の公務員と同様、理想というものを信じている。だが悲しいかな、中国では権力者に真実を伝えることが不可能な場合が多い。

この自称「社会主義」体制の根本的な欠陥は、自分たちの手に負えない客観的事実を拒絶しようとする反射的かつ制度的な反応にある。今のトランプ米政権にも似たような衝動があるが、それではウイルスの蔓延を防ぐのは難しい。

<本誌2020年2月11日号掲載>

【参考記事】新型コロナウイルス感染爆発で露呈した中国政府の病い
【参考記事】習近平は「初動対応の反省をして」いないし「異例」でもない

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プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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