コラム

加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

2021年07月20日(火)17時21分

 仮に実際が50%減でも、事実加害があったことまでは消し去れない。微に入り細に入り、「それは誇張であって実際にはその半分くらい」と言っただけで加害が焼却されると思っているのなら、その加害は歴史の法廷で断罪されるべきだ。やはり小山田の罪は微塵も消えないのである。

いじめの被害者はその痛みを永遠に忘れない

私は小学校高学年の時に酷いいじめを受けた。ちょうど小山田がクイックジャパンに告白をした1994年~95年の時代である。流石に自慰強制や食糞までされなかったが、殴る蹴るの暴行を受け、金銭要求など日常茶飯事であった。担任に助けを求めたが、当時公立学校の公務員であったHという教員は「やれ~、やれ~(笑)」とはやし立てるという鬼畜の共犯の様なもので、満足な保護行為を全くしなかった。

私をいじめていた集団の中には主犯Aと従犯Bが居て、堪り兼ねた私はあるとき弱い方の従犯Bを後方から奇襲して襲い掛かり、前面の髪の毛を血が出るほど抜きまくって報復を実行して保健室送りにした。その日のうちに主犯Aと私の関係が問題になり、給食時間の後、渋々担任のHが主犯Aと私との和解を勧告した。教員の前で仲直りするフリをして私は主犯Aのみぞおちに激烈な腹パンを決めてやり、喰った給食を全部ゲロに変えてやった。次の日から私へのいじめはパタリとなくなった。加害者はその加害をけろりと忘れて平気な顔をしてのうのうとしている。私の場合の主犯Aも従犯Bも、25年以上たった現在、私に暴行・脅迫したことなどとうに忘れているだろう。しかし被害者は永遠にその屈辱や痛みを忘れない。私は永年いじめを受けた側だから、小山田を敵とみなしている。何の制裁も受けないでのうのうと音楽活動をやって加害に向き合わない小山田を憎む。

 私の例とは違い、小山田はいじめた側から微々たる反撃すら喰らっていない、やりっぱなしの加害者である。こんな人間を五輪の作曲陣に抜擢したのも落ち度ではあるが、やはり最大の落ち度はこの期に及んで初めて「謝罪文」を出し、それまで全く加害に向き合わなかった小山田である。鬼畜小山田はいついかなる時、かつていじめた側からの反撃を喰らっても甘受する義務がある。そして皮肉なことにその反撃は現在「世論」という形で小山田に向かっている。

 加害者は自らの加害性と向き合わず、事実を指摘されると「当時の時代背景」とか「誇張があってそこまではやっていない」などと屁理屈を持ち出して正当化することが多い。本当に謝罪し改心する人間はごく少数である。小山田の様な鬼畜をカルチャーを隠れ蓑に野放しにしていることは、令和でも平成でも昭和であっても断じて許されない。カルチャーは鬼畜をかばう防波堤ではない。小山田は今後、改悛の余地があるなら被害者に対して、例え民事時効であってもその得た膨大な音楽著作権料のなかから「お詫び金・解決金」を渡して土下座せよ。それが出来ないのなら小山田はナチと同じである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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