コラム

「報道が目を光らせなければ、国家は国民を虐げる」──映画『コレクティブ 国家の嘘』の教訓

2021年09月28日(火)14時02分

トロンタンがスポーツ紙の記者であることも示唆的かもしれない。政治の腐敗が進めば進むほど、大手マスコミによる政治スキャンダル追及能力は薄れる。従って「文春砲」のようなイエロー・ジャーナリズムが、逆説的にその役割を担うことになってしまうのだ。この意味で、『コレクティブ』は、『ペンタゴン・ペーパーズ』や『1987、ある闘いの真実』のバッドエンド・バージョンとして、あるいは、よりリアリティのある『新聞記者』のヴァリエーションとして観ることも可能だろう。

『コレクティブ 国家の嘘』は、多くの人に観てもらいたい映画だ。できれば、次の総選挙の前に。ルーマニアは、おそろしい腐敗が明らかになったにもかかわらず、与党が制裁を受けることもなく、引き続き議会の多数派を手にした。さて、日本ではどうなるだろうか。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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