コラム

日本の未来が「おいしい」理由は2000年代のアメリカを見れば分かる

2022年05月19日(木)17時10分

特に顕著なのが東大だ。「東大生がリスクテイカーになっている。いちばんベンチャー企業を創ったり、ベンチャー企業に就職したりしているのが東大生」と、藤野氏は言う。

藤野氏によると、若手起業家がつくる令和型企業にあって昭和96年型企業にはない特徴は3つある。

1つめはお客様第一主義であること、2つめは長期目線を持っていること、3つめは科学やデータに基づいた考え方をしていることだ。動画では、全国の空き家に住み放題のサブスクリプションサービスを提供する会社など、令和型企業をいくつか紹介している。

「96年型はすでにたくさんあるので、令和型の会社を経営したら大いに成功する可能性がある」と、藤野氏は語る。

なぜそう断言できるかというと、過去アメリカで同じ現象が起きたから。2000年以降のおよそ10年間、インターネットの急速な普及により、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は瞬く間に世界的企業となった。

GAFAの創業者たちが起業したときの平均年齢は24歳。若手起業家が時代の変化を的確に見抜き、アメリカの経済を支えたのだ。これに影響され、アメリカではベンチャー企業を立ち上げたりベンチャー企業に就職したりする若者が増えたという。

日本の優秀な学生、とりわけ日本一偏差値の高い東大生が昭和96年企業に入ることをよしとしなくなった今の日本は、2000年代のアメリカと同じだと藤野氏は話す。

「20年前に比べて、『どんなことがあっても挑戦し続ける人』の割合が高くなった。さらに、将棋の藤井聡太さんや野球の大谷翔平さんのように、実力があり人格も優れた若い起業家が増えている。彼らが新しい雇用をつくり、日本の未来はよくなると確信している」

2040年になったら社会はきっと激変する。藤野氏は、今後20年間で起こる社会の変化を確信したうえで、今から準備することが大事であると締めた。

「未来は暗い」と嘆くばかりでなく、今できることを。激動の時代、価値観をアップデートしない「昭和型」のままでは、ただ取り残されていくだけだ。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story