コラム

「多拠点生活」の実現が、これからの日本経済を活性化させる

2021年02月15日(月)16時00分

コロナ禍のテレワークの先に「多拠点生活」が...... kokouu-iStock

<コロナ禍は、勉強や仕事をする場所の制約の考え方を新たにした。場所と仕事とコミュニティがマルチになる生活こそが「多拠点生活」が、これからの日本経済を活性化させる......>

コロナ禍は、都市の魅力であった新しい出会いや交流という機能を奪ってしまった。いまや出会いや交流の主役はサイバースペースの中だ。最近話題のSNS「Clubhouse」が流行った理由も、まさに喪失してしまった街中でのおしゃべりや新しい出会いが、そのままサイバースペースで再現されているからとも言える。

そして知的労働や学習がオンラインだけで可能になるのであれば、勉強や仕事をする場所の制約はますますなくなる。好きな時に好きな場所で働き、勉強することが可能になる。そうなると逆になぜ都市に定住しなければいけないのかという疑問が浮かびあがってくる。

場所と仕事とコミュニティがマルチになる「多拠点生活」

場所の制約からの自由を手に入れた我々はどうなるのだろう? テレワークだけで働けるようになった人々の中には、都心から離れ、広い部屋や自然環境を求めて移住する動きがある。またいっぽうで、都会の魅力も捨てがたく、定年後にリゾートマンションを買った老夫婦が、80代になり楽な生活を求めて都会へ戻って来るという話も多い。都市の利便性は大きな魅力だ。

そこで、どちらの選択もできる自由を今、我々は手に入れることができる。それが「多拠点生活」という考え方だ。

例えば東京に4ヶ月、沖縄に4ヶ月、八ヶ岳の麓に4ヶ月生活して、都会と海と山を一年間で満喫するような生活が可能になる。同じ仕事を場所を変えて行うこともできるが、八ヶ岳では高原野菜の栽培の仕事をしてもよいし、沖縄には趣味のダイビング仲間のシェアハウスで家族のようなつき合いをするかも知れない。

仕事も兼業、副業が認められる中でマルチになり、所属するコミュニティもマルチになる。場所と仕事とコミュニティがマルチになる生活こそが多拠点生活だ。

fujimoto0215b.jpg

全国の空き家に住める多拠点生活を実現するサービス

この多拠点生活は決して新しい概念では無く、特に富裕層では別荘という形でこうしたライフスタイルは古くから実現されており珍しいものではなかった。

しかし、これから起こる変化はこの裾野が劇的に広がるということだ。ベンチャー企業の「ADDress」では、会員になると全国の空き家に住める多拠点生活を実現するプラットフォームサービスを展開している。

驚くのは、なんと月に4万円という低価格でそのサービスを実現していることだ。もはや富裕層でなくても日本中を自由に移動しながら住むことが可能になっている。空き家は今後も激増することが予想されており、ますます供給される家も増えるだろう。

さらに、移動コストが気になるところだが、ANAは、ADDressと提携して、月3万円で2便から4便の航空券をつけることができるサービスの実験を行った。このサービスを利用すれば月額4+3=7万円で全国を飛行機で移動しながら住むことができるのだ。ANAはコロナ前からこの業務提携を行っているが、まさかのコロナ禍での需要の激減の中で多拠点生活市場の成長は数少ない航空需要創造の取り組みとなっており、先見の取り組みが功を奏していると言えるだろう。

プロフィール

藤元健太郎

野村総合研究所を経てコンサルティング会社D4DR代表。広くITによるイノベーション,新規事業開発,マーケティング戦略,未来社会の調査研究などの分野でコンサルティングを展開。J-Startupに選ばれたPLANTIOを始め様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画。関東学院大学非常勤講師。日経MJでコラム「奔流eビジネス」を連載中。近著は「ニューノーマル時代のビジネス革命」(日経BP)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ナスダック連日最高値、アルファベット

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、FOMC控え

ワールド

米軍、ベネズエラからの麻薬密売船攻撃 3人殺害=ト

ワールド

米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行動なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story