コラム

エジプトを襲う人食いザメはモサドの手先?

2010年12月07日(火)16時28分

 スキューバ・ダイビングのメッカとして賑わうエジプトの紅海沿岸で、この1週間に5人の観光客がサメに襲われ、1人は死亡した。

 人食いザメとはよく言うが、実際に人を襲うのは極めて珍しい。エジプト政府は世界中から専門家を集め、この「サメ危機」への対応を急いでいる。結論はまだ出ていないが、原因としては餌となる魚の乱獲、沿岸リゾートの行き過ぎた開発、地球温暖化の影響などが可能性として挙げられている。

 そして、陰謀論もある。イスラエルの悪名高き情報機関、モサドがサメを操っている、というのだ。エジプトのオンライン英字紙アーラム・オンラインは次のように報じた。

■主力の観光業に打撃


 保養地シャルムエルシェイクを本拠にする有名なダイバー、ムスタファ・イスマエル船長は昨日、公共放送のテレビ番組「今日のエジプト」に専門家として出演し、観光客を襲ったサメたちはエジプト近海のサメとは違うと語った。

 なぜそのサメたちがシャルムエルシェイクに紛れ込んだのかと司会が尋ねると、イスマエルは興奮して「違う違う」と叫び出した。「紛れ込んだんじゃない、誰かが送り込んだんだ」

 イスマエルによれば最近、イスラエルのダイバー仲間が、背中にGPSを埋め込んだ小さなサメを一匹捕まえた。これが、エジプトで人を襲うよう監視されていた証拠だという。「そうでなければ、このサメたちが事故もなく4000キロも遠い海までこられたはずがない」と、イスマエルは言う。

 南シナイ県の知事を務めるアブデル・ファディール・ショシャ将軍も、イスマエルの理論を支持した。番組中に電話してきた彼は、事件の背景にはイスラエルの情報機関モサドががいて、エジプトの観光産業に打撃を与えようとしている可能性があると言った。そして、裏付けにはもっと時間が必要だとも付け加えた。

 サメの襲撃は、観光業が経済の支柱で重要な雇用創出源でもあるエジプトに本当の打撃をもたらす可能性がある。だが、それがイスラエルの仕業だというのはいくらなんでもこじつけが過ぎる。

──マックス・ストラッサー
[米国東部時間2010年12月6日(月)17時31分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 7/12/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から

ワールド

北朝鮮が約10発の弾道ミサイル発射、東海岸沖の海に

ワールド

米、カーグ島の軍事目標「完全破壊」 イランは石油施

ワールド

米で「アンティファ」メンバーに有罪判決 初のテロ罪
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 7
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 8
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 9
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 10
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story