コラム

ノーベル賞授賞式か対中ビジネスか

2010年11月10日(水)17時22分

 クリスチャン・サイエンスモニター紙によると、フランスはブリュッセルで、中国の反体制作家、劉暁波(リウ・シアオポー)のノーベル平和賞授賞式に参加するかどうかに関してEU(欧州連合)の姿勢を統一するための会議を開こうとしていると伝えた。中国が欧州各国に欠席を要求しているからだ。


 G20に出席する中国外務省の崔天凱(ツォイ・ティエンカイ)アジア局長は先週、劉の授賞式に参加する国々は「結果を覚悟」しなければならないと語った。人権保護と民主政治を求める08憲章の起草で国家政権転覆扇動罪に問われた劉は、懲役11年の刑を受けて服役中だ。

 フランスのベルナール・クシュネル外相は今朝、ニコラ・サルコジ大統領と温家宝(ウエン・チアパオ)中国首相は先週の首脳会談で、対中輸出など200億ドルの契約に加えて人権問題についても話し合ったと仏RTLラジオに語った。

「中国政府の警告に負けずフランスが授賞式に出席することを希望する」と言いながら、クシュネルはこうも付け加えた。「欧州の同胞と協議のうえ足並みを揃える」

 フランス外務省のある関係者は、ブリュッセルで予定されている会議の焦点は2つあると語った。第一は劉氏のノーベル賞授賞式に参加することが適切か否かの判断、そしてもし適切だとしたら「大使が出席すべきか、代理大使にとどめるべきか」だ。


 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の訪問を受け入れた国々が思い知らされてきたように、「結果を覚悟せよ」という中国の脅しは本物だ。だが、授賞式を欠席したり出席者の格を下げるようなぎこちないまねをするのは、反体制派の劇作家でチェコの前大統領バツラフ・ハベルが言うように「行動せずに負けること」だ。世界に対して、サルコジ政権は人権大国の看板を完全に放棄したというシグナルを送ることになるだろう。

<追記>
 良いニュースだ。フランスは今日、授賞式への出席を表明した。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年11月09日(火)19時35分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 10/11/2010. ©2010 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏が第3政党計画にブレーキと報道、当人は否定

ワールド

訪日外国人、4.4%増の340万人 7月として過去

ワールド

中国の7月原油輸入、ロシア産が増加 米国産は2カ月

ビジネス

日経平均は続落、4万3000円割れ 利益確定売り優
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story