コラム

暑さで奇行に走るロシア人

2010年07月21日(水)16時59分

pa_080710.jpg

学習中 暑くて水に飛び込むのはいいけれど(7月19日、モスクワの噴水で水浴びする少年)
Denis Sinyakov-Reuters

 ロシア人は、酷寒への対処法なら大昔から知っている(バターを厚塗りしたパンや、グラスからあふれんばかりのウォッカもそうだ)。だが連日記録を更新し、一時37度にも達した猛暑をしのぐすべはまだ学習し始めたばかり。

 30度を超える程度の気温なら、ワシントンのエリート住人にとってはそれ程大したことではない。だが、ストリング・ビキニより毛皮のコートを着込むのに慣れたロシア人はこの夏、暑さに耐えかね常軌を逸した(しかもあまり褒められない)行動に走り始めている。

 おそらく最も警戒すべきは、熱波から逃れようと必死になるあまり、溺れる人が急増していることだ(遊泳禁止のサインを無視して飛び込むロシア人の動画はここ、本編はCMの後。7月のある週だけで、200人以上のロシア人が溺死したと報じられている。水に飛び込む前に泥酔していた人が多いのも、数字を押し上げている。

 この夏の犠牲者の総数を聞いたら、どんなライフセーバーも椅子から転げ落ちるだろう。6月が1244人、7月がこれまでに400人(教訓は、透き通った液体は1度に1種類しか飲まないこと。ウォッカか水浴びか、どちらかだ)。

 懸念すべき数字だが、驚くほどではない。ロシア人が溺れて死ぬ確率は、もともとアメリカ人より5倍も高いのだ。

 しかしこの夏本当に呆れ返ったニュースといえば、先週、ロシア南部のプライベートビーチの経営者たちが、宣伝用にロバにパラセーリングをさせた事件だ。海水浴客たち(ただし、しらふの者に限る)は、空から降りてきたロバを全力で救助した。

 事件はたちまちセンセーションになり、ロシアの国営テレビで放送され、経営者たちは動物虐待容疑で捜査を受けている。動物に冷たいロシア人には珍しくもない事件、という声もあるが、やはりこれも暑さのなせるわざだったかもしれない。

──クレア・セスタノビッチ
[米国東部時間2010年07月20日(火)11時57分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 21/7/2010.© 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長 対米投資も検討

ワールド

米国がAUKUS審査結果提示、豪国防相「米は全面的

ワールド

アングル:大火災後でも立法会選挙を強行する香港政府

ビジネス

リオ・ティント、コスト削減・生産性向上計画の概要を
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story