コラム

米原油流出は核爆弾で止めろ!

2010年05月19日(水)14時53分

 米海軍潜水艦の元乗組員でコロンビア大学で核政策を研究しているクリストファー・ブラウンフィールドが、メキシコ湾の原油流出の解決策について、奇妙なブログを「デイリー・ビースト」のサイトに掲載した。


メキシコ湾でBPの原油流出が起きたその日、私は直感した。核で油井をふさげばいいと。


 本当か? それが彼の直感だったのか? 核兵器だって? ブラウンフィールドはこうも書いている。オバマはこの作戦を使わないだろう、なぜなら彼の世界的な反核政策にとって「問題」が生じるから、と。

 私は核不拡散の専門家ではないが、アメリカ沖80キロで核兵器を爆発させることが「問題」になるであろう理由は、上記以外にいくつか思い付く。いずれにせよブラウンフィールドは、軍が関与する場合は通常兵器だけを使ったほうが効果的に油井をふさぐことができるかもしれない、と感じているようだ。

 次も興味深い。


木曜日(13日)、核をぶち込むという私の直感が正しいと確認できた。ソ連軍が1966年以降、海底の油田やガス田からの流出を食い止めるために核爆弾を4回使ったと、CNNが報じたのだ。


 おかしな話だ。この件については、わがフォーリン・ポリシー誌の寄稿者ジュリア・ヨッフェが詳しく説明している。


ロシアで最も売れている日刊紙コムソモリスカヤ・プラウダによると、ソ連時代には原油などの流出は控えめな地下の核爆発でふさがれていた。考え方は単純で、「地下爆発が岩を動かし、圧力を掛け、最終的には油井をせき止める」という。

そう、実に単純なのだ! 実際、油田の大惨事に対処するため、石油輸出大国のソ連はこの方法を5回使った。最初は1966年9月30日、ウズベキスタンの地下1.5キロで、広島級原爆の1.5倍の爆発を起こした。

また、地下ガス貯蔵スペースを作ったり運河を建設するといった日常的な作業のため、ソ連では169回も地下核爆発が起こされたと、同紙は伝えている(太字は引用者)。


 環境上の大惨事に直面したとき、「ソ連なら今回の事故にどう対応するか」というのは、必ずしも私が最初に知りたいことではない。だが事態が深刻になっていることは確かだ。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年05月18日(火)12時01分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 19/5/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ワシントンの州兵銃撃、1人が呼びかけに反応 なお

ビジネス

アングル:ウクライナ、グーグルと独自AIシステム開

ワールド

韓国大統領、クーパン情報流出で企業の罰則強化を要求

ワールド

豪政府支出、第3四半期経済成長に寄与 3日発表のG
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story