コラム

スキャナー拒否のパキスタン訪米団が英雄に

2010年03月11日(木)14時40分

 アメリカとパキスタンの関係は、常に中核となるいくつかの課題に左右されている。たとえばパキスタンの秘密警察、軍統合情報局(ISI)が、CIA(米中央情報局)とタリバンの両方と取引している問題や、アメリカとインドが05年に基本合意した原子力協定、そしてパキスタンの核安全保障など。重要には違いないがいつも同じ話ばかりなので、たまに目先の変わった悶着が起きると新鮮な感じがする。

 3月7日、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港で起った一件がまさにそうだ。オバマ政権高官に会うためワシントンを訪れていたパキスタン議員の代表団が、X線スキャナーによる身体検査を拒絶。次の訪問地であるニューオーリンズ行きの飛行機への搭乗を拒否された。

 パキスタンは、普通の国より厳重な検査を受けなければならない14のイスラム教国の一つ。議員たちは気分を害し、次の飛行機で憤然とパキスタンに帰ってしまった。「テロリスト扱い」を拒絶して帰国した彼らは、テレビに出演するなどパキスタンの英雄扱いだという。釈明に追われて大変だったのは、イスラマバードの米国大使館と協力してパキスタン議員団の訪米ツアーを企画した米国務省だ。

 深刻な外交問題に発展するほどの話ではない。それでもこの事件は、パキスタン政府との関係改善と国家安全保障というしばしば相反する2つの課題の間で綱渡りをするアメリカ外交の難しさを象徴している。

──ピーター・ウィリアムズ
[米国東部時間2010年03月10日(水)16時33分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 10/3/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ

ワールド

「サナエノミクス2.0」へ、総裁選で自動車税停止を

ビジネス

自民新総裁で円安・株高の見方、「高市トレード」再始
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story