コラム

「政文分離」で日朝交流に雪解けを

2012年04月18日(水)14時41分

今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク

〔4月11日号掲載〕

 太宰治のゆかりの地でもある東京西部の玉川上水。桜の時期を迎えた今は、散策するのに最適だ。その玉川上水沿いの散策道を、僕の母校でもある一橋大学小平キャンパスから西に2キロほど進むと、一見何の変哲もないようで少し異様な空気の漂う大学が現れる。

 東京にありながら日本人も韓国人も自由に入れず、皆がその存在を見て見ぬふりをする、その名も朝鮮大学校だ。校門を出入りする学生は日本語を話し、見た目も日本人と区別がつかない。それなのに、キャンパスの塀には「38度線」のような鉄条網が張り巡らされており、上空には近くの基地を飛び立った米軍機が、監視しているかのように飛び交う。

 物々しい雰囲気を漂わせるこの大学だが、その中で一際目を引くのはナイター設備を完備した人工芝の立派なサッカーグラウンドだ。だが部員は少ないようで、半分ほどの面積しか使われていない。一方、一橋大学のサッカー部はデコボコした土のグラウンドで泥まみれで練習している。芝のグラウンドで一緒に練習試合でもできれば、双方にとってWin‐Winになるだろうに......。

 僕が学生だった90年代初頭には学園祭での両校の文化交流もあったが、近年は途絶えているようだ。政治的関係は難しくとも、それとは関係なく付き合うのが若者の自由な精神だと思うのだが。

 日朝国交正常化についてここでとやかく言うつもりはない。だが、日本と国交のない国の1つが、歴史的にも地理的にも最も近い国だという異常な状況を放置することは、日本および東北アジアの「地域益」にならないと断言できる。その分断構造を打開できる唯一の道が「文化」だと、僕は勝手に信じている。

 冷戦時代、日本の対中国政策の基本原則は「政経分離」だった。だが経済制裁中の北朝鮮に対しては、その前段階として政治と文化・スポーツを切り離した「政文分離」から始めるほかない。米中の和解も「ピンポン外交」から始まった。

■日朝のキーマンは秋元康?

 旧態依然に見える北朝鮮だが、文化面では「韓流」が浸透するなど変化の顔も見せている。脱北者の中には韓流を通じて韓国への憧れを抱いたと証言する人もいる。韓流スターのファッションや髪形をまねる北朝鮮の若者がいることは、社会の変化の可能性を示す兆候といえる。

「人工衛星」発射で周辺国を騒がせている新体制だが、一方では「文化外交」も展開している。アメリカとは、以前からニューヨーク・フィルハーモニックの平壌公演や、テコンドー交流を実現している。3月にはパリで韓国人の指揮者が北朝鮮の管弦楽団を指揮した。

 この流れに文化国家の日本が乗れないのは残念だ。そこで、1つとっぴな提案をしたい。インドネシア版AKB48の「JKT48」を誕生させた秋元康に、次は「NKB48」を誕生させてもらうのだ。

 朝鮮半島に「南男北女」という言葉があるように、伝統的に美人は北に多いとされる。韓流ならぬ「朝流」を担う原石があの地にはいるということだ。しかも韓流スターにありがちな「整形美人」ではなく「天然美人」だ。

 ちなみにNKBのBはBabyの頭文字だ。決してBombではない。AKB48のヒット曲「ヘビーローテーション」の歌詞「I want you! I need You!」をNKB48が歌えば、妙なリアリティーもありそうだ。

 これは荒唐無稽な「ミッション・インポッシブル」だろう。だが、このような文化外交こそ日本が世界にアピールできる得意分野だと思う。

 僕は、太宰治の『斜陽』に出てくる「人間は恋と革命のために生まれてきた」という言葉が好きだ。近所の大学生が一緒にサッカーで汗を流す、そんな素朴で持続可能な「革命」を夢想しながら、僕は「雪解け」後の玉川上水を歩く。

プロフィール

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・クォン・ヨンソク(一橋大学准教授)
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・アズビー・ブラウン(金沢工業大学准教授)
・コリン・ジョイス(フリージャーナリスト)
・ジェームズ・ファーラー(上智大学教授)

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