コラム

「パチンコ税」を創設し、ギャンブルを合法化せよ

2014年07月02日(水)18時48分

 自民党などが提出したカジノ法案は通常国会では成立が見送りになったが、新たに「パチンコ税」が浮上しているようだ。法人税率を下げる財源として、財務省はかねてからパチンコなどのギャンブルへの課税を検討しているが、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」(保岡興治会長)がパチンコ税の勉強会を開くなど、有力議員にも賛同者が出てきた。

 パチンコの産業規模は、2012年で約19兆円(日本生産性本部調べ)。通信業界とほぼ同じ巨大産業である。これに1%課税するだけで、1900億円の税収が上がる。今はパチンコは「遊戯」ということになっているが、それがギャンブルであることは公然の秘密だ。東京では「T.U.C.」という看板の店にパチンコ屋の景品をもっていくと、換金してくれる。

 建て前上は、パチンコ屋は客に玉を貸しているだけで、石鹸などの「特殊景品」を買い取るのは景品交換所だが、彼らは景品を景品問屋に売る。問屋は景品をパチンコ屋に卸す「三店方式」をとっている。刑法185条では「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と規定されているので、客がパチンコ屋から現金を受け取ると違法だが、景品をもらうのはゲームセンターと同じで合法だ――という解釈になっている。

 しかしそんな建て前を信じている客はいない。特殊景品をもらうのは換金するためであり、パチンコは競輪・競馬と同じギャンブルである。このように法の抜け穴をくぐる行為を脱法行為と呼ぶ。これは警察が摘発しないから営業できるだけで、警察がその気になれば摘発できる。たとえばパチンコ屋が景品交換所から直接景品を買い取ると、摘発される。

 だからパチンコ屋も景品交換所も問屋も、警察には絶対服従だ。担当の警察官を接待したり、警察OBが業界団体やメーカーに天下りしたりする「パチンコ利権」は大きい。たとえば2002年に前田健治元警視総監は、大手パチスロ機メーカーの常勤顧問に就任した。特に問題が大きいのは、パチンコ業界が北朝鮮や暴力団の資金源になっていることだ。警察がそれを見逃す代わりに天下りしているとすれば、パチンコ業界だけの問題ではない。

 賭け事を禁止するのはピューリタンの倫理で、日本の伝統ではない。日本で賭博を禁止したのは明治以降だが、それで博打がなくなったわけではない。今でもパチンコや麻雀や賭けゴルフなどのギャンブルは広く行なわれており、暴力団の資金源になっている実態も変わらない。ギャンブルがよくないのは、売春と同じく非合法化されるために「地下経済」の資金源になるからだ。

「ギャンブルを合法化すると子供の教育によくない」という人もいるが、競輪・競馬が合法なのに、なぜパチンコやカジノが違法なのか、説明できる親がいるだろうか。ギャンブルは生活を破壊するというが、競馬で人生が破壊された人も多い。バチンコだけを禁止しても、ギャンブル依存症はなおらない。競馬は自治体の収入になっているというのなら、パチンコもそうすればいい。競馬のように25%も課税すれば、合理的な人は賭けないだろう。

 これを「換金免許制度」などの形にして店で換金を認める方式が検討されているようだが、免許に警察の裁量がきくと利権が温存される。すべてのギャンブルを一律に合法化して高率の税をかけ、公的に管理したほうがいい。競輪・競馬も民営化し、民間企業の参入を認めるべきだ。

プロフィール

池田信夫

経済学者。1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。93年に退職後、国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラ研究所所長。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『アベノミクスの幻想』、『「空気」の構造』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。池田信夫blogのほか、言論サイトアゴラを主宰。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラックフライデーの米オンライン売上高は過去最高、

ワールド

北朝鮮の金総書記、空軍の核戦争抑止力を強調 式典で

ビジネス

中国製造業PMI、11月は8カ月連続50割れ 非製

ワールド

米・ウクライナ、30日にフロリダで会談 和平案協議
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story