コラム

犬との生活が人の死亡リスクを抑制する...ほか、2024年に発表された動物にまつわる最新研究5選

2024年12月30日(月)17時45分

新年を迎えると、十二支は辰年から巳年に変わります。これにちなんで、恐竜とヘビの最新研究を紹介しましょう。

糞の化石から恐竜類の食物の変化を推測

スウェーデンのウプサラ大などによる研究チームは、糞の化石によって、恐竜類の繁栄にまつわる食物の変化と当時の生態系を推測しました。研究成果は総合科学学術誌「Nature」に11月27日付で掲載されました。

恐竜類は、中生代中期三畳紀(約2億4000万年~2億3000万年前頃)に出現したと考えられています。その後、約2億130万年前に発生した「大量絶滅」を生き延び、ジュラ紀~白亜紀に繁栄して陸生脊椎動物の頂点に立ちます。けれど、約6550万年前の「大量絶滅」によって鳥類を除いて絶滅してしまいました。

恐竜の歴史で最もよく分かっていないのは、出現から繁栄までの約3000万年間です。今回、研究者らは、ポーランドの約2億3000万年前~約2億年前の地層から採集された恐竜類の糞や消化管の内容物の化石500個以上を調べました。

その結果、当時の気候のデータや植物、食物網の変化と恐竜の体格変化などを明らかになりました。消化管の内容物の化石は、時代が進むとともに大きくなり、種類も多様になっていきました。このことは、恐竜類の体が大きくなるのにしたがって、新しい食物を食べるようになっていったためと考えられます。

さらに、①恐竜類の出現初期にそれ以外の脊椎動物が雑食の恐竜類に取って代わられ、②最初の肉食恐竜が多様化し始めた時期に昆虫食や魚食の獣脚類や小型で雑食の恐竜類が出現、③三畳紀末期の気候変化により、それまで優勢だった植物食の偽鰐類や獣弓類が多様な植物を食べることのできる大型の竜脚形類や初期の竜盤類に取って代わられ、④新たな植物食恐竜が出現したことで獣脚類が急速に進化して体が大きくなった、という進化過程の仮説が立てられました。

研究者たちは、恐竜たちに起こった一連の変化は全世界的に起こっていたのではないかと考えています。

2種に分けられるオオアナコンダ

米ニューメキシコ・ハイランズ大などによる研究チームは、世界最大のヘビの1つとされるオオアナコンダ(Eunectes murinus、英名Green Anaconda)は遺伝的に異なる2つの種に分けられることを明らかにしました。研究成果は生物多様性に関する学術誌「MDPI Diversity」に2月16日付で掲載されました。

オオアナコンダは南米のアマゾン川流域に分布しています。体長は3~6メートルで、5メートルを超えるものは体重が100キロ以上のものも少なくありません。最大記録とされる個体は、体重227キロ以上、体長8.9メートル以上といいます。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story