コラム

幻の常温常圧超伝導ニュースを超えた! 京大チームが超伝導体で「ノーベル賞級」の大発見か

2023年08月18日(金)15時20分

研究チームの一員であるカナダのブリティッシュ・コロンビア大のフセイン博士は、「最初は、それが何なのかまったく分かりませんでした。しかし、いろいろなことを除外していくうちに、本当に悪魔を見つけたのではないかと疑い始めたのです」と振り返ります。

「パインズの悪魔」を捉えたことを明らかにするために、研究チームはイリノイ大の理論物理学者のグループに新たに研究に参画してもらいました。観測データと理論チームによるストロンチウム・ルテニウム酸化物の電子構造の特徴をもとにした計算を突き合わせると、今回の観測結果は「パインズの悪魔」の特性を確かに示していました。

また、科学の新発見には「再現性」が必要不可欠です。同チームは繰り返し実験を行い、繰り返し悪魔粒子の検出に成功しています。

研究者たちは、今後はまずストロンチウム・ルテニウム酸化物を使って、パインズの悪魔の性質を詳しく調べていくといいます。

これまでの実験から、悪魔粒子の出現とともに電子の保持するエネルギーに変動が起きていることが判明しています。もしかしたら、悪魔粒子は超伝導を引き起こすための重要な役割を担っているのかもしれません。悪魔粒子と超伝導の関連性を知ることができれば、今度こそ常温超伝導体を十分な再現性をもって作成できるかもしれませんね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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