コラム

生命の「地球外起源説」を強力サポート 隕石の再分析でDNA、RNAの核酸塩基全5種の検出に成功

2022年05月10日(火)11時30分

研究グループは、隕石の落下地点の土壌に含まれる核酸塩基の種類や濃度と比較検討して、検出された核酸塩基はもともと隕石に含まれていた宇宙由来のものだと結論付けています。

これらの知見から、核酸塩基類の一部は星間分子雲の中で光化学反応によって生成されて、太陽系が形成されるにつれて小惑星に取り込まれ、最終的に隕石によって地球に運ばれた可能性が強く示唆されます。地球上の初期生物の遺伝機能出現の過程を読み解く鍵になりそうです。

今回使用した最新の計測方法は、2020年に探査機「はやぶさ2」が炭素質小惑星リュウグウから地球に持ち帰ったサンプルや、2023年に地球に帰還予定の探査機「オサイリス・レックス」が持ち帰る小惑星ベヌーのサンプルにも適用する計画です。

リュウグウのサンプルは、地球大気圏に進入する際に高温にさらされる隕石よりも、地球誕生前の太陽系の物質組成を良好な状態で保っていると考えられます。研究グループが開発した高感度の分析手法で、地球生命の起源の謎の解明がさらに進歩しそうです。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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