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地球外物質

地球には年間約5200トンの地球外物質が降り注いでいる

2021年4月12日(月)17時50分
松岡由希子

南極で採取された地球外物質 photo: Cécile Engrand/Jean Duprat

<フランス国立科学研究センターなどの研究チームが、南極で地球外物質を採取し、これを分析したところ、年間5200トンの地球外の塵が地表に到達していることがわかった...... >

地球は毎年、彗星や小惑星からの塵と遭遇している。これら惑星間塵の粒子は、地球の大気を通過して流星になったり、微小隕石として地表に到達することもある。

それでは、地球には宇宙の塵がどれくらい降り注いでいるのだろうか。フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ=サクレ大学、米国の国立自然史博物館(NMNH)らの国際研究チームは、約20年の研究活動を経て、「年間5200トンの地球外の塵が地表に到達している」との研究論文を2021年4月15日発行の学術雑誌「アース&プラネタリー・サイエンス・レターズ」で発表した。

南極で30〜200ミクロンの地球外物質を採取し分析

研究チームは、南極大陸東部アデリー海岸から1100キロ内陸の氷床「ドームC」にあるフランスとイタリアの共同観測基地「コンコルディア基地」で6回にわたって調査を実施。30〜200ミクロンの地球外物質を採取し、これを分析した。「ドームC」は、積雪が少なく、大気中の塵がほとんどないため、地表に到達した地球外物質の採取場所に適している。

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©Jean Duprat/ Cécile Engrand/ CNRS Photothèque

一連の調査で、未融解微小隕石(uMM)1280個と宇宙球粒(大気圏に突入した際に完全に融解した物質:CS)808個が特定された。研究チームは、これらをもとに年間の流入量を予測し、約1600トンの未融解微小隕石と3600トンの宇宙球粒とを合わせて約5200トンが地表に到達していることを示した。これらのうち約80%は彗星から到来したもので、その多くが木星族彗星からのものとみられる。残り20%は小惑星からのものだ。

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Cécile Engrand/Jean Duprat

大気圏突入前の宇宙塵の質量は1万5000トン

研究チームの予測によると、大気圏突入前の宇宙塵の質量は1万5000トンで、地表に到達する質量よりも大きい。このように質量の差が生じる原因については明らかになっていないが、研究チームは、「地表に到達した未融解微小隕石が小さくて脆く、十分に採取されなかった」、「大気圏突入前に宇宙塵の一部が取り除かれた」、「惑星間塵の粒子の数が想定よりも少ない」という3つの仮説を示している。

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