コラム

日本はいちばん門戸が広い? 宇宙飛行士選抜試験を読み解く

2021年11月30日(火)11時25分

ところで、年齢や転職が難しいなどの問題を抱える人は、宇宙飛行士の夢を諦めなければならないのでしょうか。現在は、「民間人宇宙飛行士(商業宇宙旅行の参加者)」という方法が実現可能になりつつあります。

日本人初の宇宙飛行、かつ世界初の商業宇宙飛行は、1990年にTBS記者の秋山豊寛さんによって成し遂げられました。今年12月には、ZOZO創業者の前澤友作さんが、日本人初の商業宇宙旅行を行います。日本人で宇宙に行った人は、秋山さん、前澤さん以外はすべてJAXAの公的な宇宙飛行士です。ちなみに、秋山さんは報道の仕事で宇宙に行ったので、宇宙旅行ではなくJAXAの宇宙飛行士のミッションのように「宇宙飛行」と呼ばれています。

前澤さんは2023年に民間人初の月周回旅行をする予定です。今回は前哨として、アメリカの宇宙旅行会社スペースアドベンチャーズとロスコスモス(ロシア連邦宇宙局)のサポートのもと、民間人宇宙飛行士として日本人で初めて(世界では8人目)ISSに滞在します。

12月8日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられるソユーズ宇宙船「MS-20」に搭乗し、ISSに12日間滞在して、20日に地球に帰還する予定です。宇宙旅行の費用は1人50億円と推定されていて、前澤さんはサポートスタッフの社員の分と合わせて2人分を支払っているそうです。

自分に当てはめてみた時、宇宙飛行士試験に受かるのと50億円で宇宙旅行をするのは、どちらの可能性が高そうでしょうか。

◇ ◇ ◇

JAXAは宇宙飛行士募集の特設サイトを開設しました。12月1日(水)の18時から、初めての「宇宙飛行士候補者採用説明会」がオンライン開催されます。「試験にチャレンジする」を選んだ人は、ぜひご参加ください。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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