コラム

モバイル動画の最終形とVRの未来

2016年09月02日(金)16時00分

chinzogzag-iStock.

<VRのキラーコンテンツはどんなものになるのか? LINE LIVEのモバイル動画「WANTED~キンコン西野逃走中!?~」の成功から占う>

 自分が新聞業界出身ということもあり、インターネットがコンテンツ産業に与える影響について長年いろいろ考えてきた。先日も株式会社gumiの國光宏尚氏と話していて思ったんだけど、配信するデバイスがコンテンツに与える影響って一定のパターンがある。同じパターンで、人気コンテンツが変化していくように思う。

操作方法が直感的に楽しいゲームが流行る

 例えばゲーム。スマートフォンでゲームがプレイできるようになったときに、既存ゲームメーカーは家庭用ゲーム機で人気だったゲームをそのままスマホ上に持ってこようとした。でも大して流行らなかった。

「直感的に気持ちのいい操作方法がデバイスによって異なるので、以前のデバイスのコンテンツをそのまま持ってきてもうまくいかないんですよ」と國光さんは解説してくれた。スマホゲーム市場で一定の業績を上げてきた國光さんならではの見解だ。家庭用ゲーム機にはハードウエアのボタンがある。このボタンを使った気持ちのいい操作方法とは、例えば連打。なので家庭用ゲーム機で流行ったゲームには、ボタンを連打する操作が必要となっているものが多い。

 一方でスマホの画面は、固くて連打しづらい。「スマホで直感的に気持ちのいい操作方法は、連打でなく、指で画面をなぞること。パズドラやツムツムといった人気ゲームの操作方法は、画面を指でなぞるというやり方。なので大ヒットしたんです」と國光さんは言う。

【参考】特集ポケモンGO

 なるほど。それがヒットの一因だったんだ。デバイスの特性を理解するということなんだ。


最後は特性を理解したプロの作るコンテンツ

 興味深いのは、コンテンツ業界がこの「デバイスの特性」を理解するのに、どうやら一定の時間がかかるということだ。

 ゲーム業界では、まず家庭用ゲーム機のゲームをそのままスマホ上で展開して概ね失敗。その代わりに流行ったのが、個人のクリエーターが開発したゲームだった。

 そういえば、画面を指でなぞる操作で、ゴミ箱に紙くずを投げ入れるというスマホゲームが以前流行ったっけ。直感的に楽しい操作方法が重要だと理解した上で開発したのか、たまたま成功したゲームが画面を指でなぞるゲームだっただけのか。それは分からない。でも個人クリエーターが試行錯誤してくれたおかげで、スマホゲームでは指で画面をなぞる動作が多くの人に好まれるということが分かった。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

FRB理事候補ミラン氏、政権からの利下げ圧力を否定

ワールド

ウクライナ安全保証、26カ国が部隊派遣確約 米国の

ビジネス

米ISM非製造業指数、8月は52.0に上昇 雇用は

ビジネス

米新規失業保険申請、予想以上に増加 労働市場の軟化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story