コラム

ハリウッドの白人偏重「ホワイトウォッシング」は変えられるか?

2017年11月09日(木)11時30分

アメリカのファンから糾弾されている映画のホワイトウォッシングは数え切れないほどがある。黒人やヒスパニック系の俳優らが抗議する例はよくあるが、ここではアメリカ人のファンがネットで批判しているアジア・中東の例をご紹介しよう。

■『ドラゴンボール・エボリューション』(2009)
悟空を演じたのは白人のジャスティン・チャットウィン

■『エアベンダー』(2010)
原作は『アバター  伝説の少年アン』というアメリカで人気テレビアニメシリーズ。ファンの間では「アバター」と呼ばれていたが、同じときに『アバター』という別の有名な映画が公開されたため、アニメの実写化映画の題名から「アバター」という名前が消えた。登場人物全員がアジア人なのに、実写化映画では重要な俳優がすべて白人

■『ラスベガスをぶっつぶせ』(2008)
MITの数学の学生たちがラスベガスのカジノで一儲けしようと企んだ実話を元にした映画。主人公のモデルは中国系アメリカ人のジェフ・マーだが、映画ではジム・スタージェスが演じる白人になっている

■『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(2010)
原作は、アラビアンナイトのような世界観のゲーム。ペルシャ人(イラン人)のダスタン王子を演じているのは、ジェイク・ジレンホール

■『アロハ(Aloha)』(2015)
アジア系ハーフのはずのアリソン・イングが、なぜか生粋の白人エマ・ストーン

■『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)
攻殻機動隊のハリウッド版で、草薙素子をスカーレット・ヨハンソンが演じた。日本では問題視されていないようだが、アメリカではホワイトウォッシングの典型的な例としてよく取り上げられる

この中でも、最も大きな意味を持つのが、『エアベンダー』(アバター)だろう。原作は2005年から08年にかけてテレビで放映された『アバター 伝説の少年アン(Avatar: The Last Airbender)』というアニメシリーズだ。

アメリカ原作のアニメとしては珍しく、古代中国を主体としたアジアの国々がモチーフになった世界観だ。登場人物はすべてアジア人だったのに、人種を超えてアメリカ中で人気になった。当時子どもだったファンは、その影響力を『ハリー・ポッター』シリーズと比べるくらいだ。

アニメシリーズ『アバター』に感情移入した子どもたちは、キャラクターを「アジア人」として見なかった。人種に関係なく、登場人物らは、自分の分身であり、友だちだったのだ。

アメリカの若者がこういった環境で育ったことはとても重要だ。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

外貨準備のドル比率、第3四半期は56.92%に小幅

ビジネス

EXCLUSIVE-エヌビディア、H200の対中輸

ワールド

25年の中国成長率、実際は2─3%台か 公式値の半

ビジネス

利下げしなければ、景気後退リスク増大─ミランFRB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story