最新記事
ウクライナ

【アウディーイウカ陥落】ロシアの近接航空支援や滑空爆弾に対しウクライナ軍の空域には穴が開いていた

How Ukraine Lost Avdiivka

2024年2月20日(火)14時59分
ブレンダン・コール

ウクライナ軍部隊が前線としていたアウディーイウカのコークス工場(2月15日) REUTERS/Alexander Ermochenko

ウクライナ軍は2月17日、東部ドネツク州の激戦地アウディーイウカからの撤退を発表した。ロシア軍にとっては、2023年5月に同じくドネツク州にあるバフムトを制圧して以降、初めての大きな戦果となる。

【動画】戦車を乗り捨て逃げるロシア兵たちの姿...ウクライナのドローン攻撃を受け

ロシアの国営テレビはこの勝利を称え、ウクライナ軍が防衛線を敷いていたコークス工場など、アウディーイウカの各地で青と黄色のウクライナ国旗が白・青・赤のロシア国旗に置き換えられる様子を放送した。

 

こうしたなか、ウクライナ軍が過去1週間に直面してきた厳しい状況についての詳細が明らかになりつつある。アウディーイウカの戦いではロシア軍も多くの兵士や設備を失ったが、ウクライナ軍もかなりの犠牲を被ったと報じられている。

ウクライナメディアのRBCによれば、新しくウクライナ軍総司令官に就任したオレクサンドル・シルスキーは先週はじめにアウディーイウカを訪問。その後、2月15日までには、欧米供与の兵器で装備を固めた精強な第3独立強襲旅団をアウディーイウカに投入したという。

ウクライナ軍は現地で、あらゆる方面から攻撃を仕掛けてくるロシア軍の7つの旅団に応戦しなければならなかった。RBCの報道によれば、ウクライナ軍のマキシム・ゾリン司令官は、「こちらの兵士6人で守っているところに、約100人のロシア兵が猛攻を仕掛けてくることもあった」と述べた。

ロシアが兵力で7倍、砲弾発射数で5倍

ウクライナ軍のオレクサンドル・ボロディン報道官は、ロシア軍の兵力はウクライナ軍の7倍だったと説明。またバフムトでは「肉弾戦」を仕掛けてきたロシア軍が、アウディーイウカには爆弾や大砲を備えた独立自動車化狙撃旅団やその他の専門部隊が送り込んできたと述べた。

またRBCは、ロシア軍は誘導爆弾や戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車やFPV(一人称視点)ドローンをほぼ「無制限に」使用することができたと伝えた。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのシンクタンク「LSE IDEAS」のシニア・アソシエイトであるレオン・ハートウェルは、アウディーイウカがロシア軍に掌握された原因として、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による大幅な軍備増強、西側諸国の明確な目標の欠如、そして西側諸国によるウクライナへの『支援の約束』と『現実の支援』の大きな隔たり」の3つが挙げられると指摘した。

「ウクライナ軍はロシア軍に対して圧倒的に不利な条件で、前線での砲弾発射数はロシア軍が5倍と圧倒された。アウディーイウカはその悲惨な例だ」とハートウェルは指摘。「ロシア軍は1日に1万発近くの砲弾を発射しているのに対して、ウクライナ軍の砲弾数は以前の約1万発から現在は2000発に激減している」「ウクライナ軍がアウディーイウカでここまで持ちこたえたことのほうが驚きだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ワールド

サウジ6月原油販売価格、大半の地域で上昇 アジア5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中