最新記事

犯罪捜査

父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴え...その驚愕の真相に迫る

FIELD OF NIGHTMARES?

2022年11月26日(土)19時32分
エリク・ファーケンホフ、ナビード・ジャマリ(いずれも本誌記者)
ドナルド・ステュディー

ドナルド・ステュディーはアメリカ史上最多の犠牲者を出した連続殺人犯かもしれない PHOTO ILLUSTRATION BY NEWSWEEK; SOURCE PHOTO: COURTESY OF LUCY STUDEY

<何十人もの若い男女を殺害し、子供たちに手伝わせて遺体を遺棄したと娘が証言。FBIと保安官が捜査に乗り出した>

現在53歳のルーシー・ステュディーは過去45年間、耳を貸してくれる相手なら誰でも構わず話してきた。自分の父親はおびただしい数の若い男女を殺害し、子供たちに手伝わせて一部の遺体を埋めていた、と。

誰も彼女の話を信じなかった。

だが最近、探知犬を使った捜索が行われ、彼女の言う場所に遺体の一部が埋まっている可能性が浮上した。捜査関係者の話では、そこはネブラスカ州オマハから65キロほど南、アイオワ州西部の辺ぴな一帯だ。

「遺体がある場所は分かっている」と、ステュディーは本誌に話した。父親のドナルド・ディーン・ステュディーは雪のない季節には手押し車で、冬にはソリで遺体を運んだという。多くの遺体は深さ30メートルほどの井戸に投げ捨てたが、未舗装の道の横に穴を掘って埋めることもあったという。「父はただ『井戸に行くぞ』と言うだけだった。でも、それが何を意味するか私には分かっていた」

そう言って、彼女は一瞬口をつぐんだ。「井戸に行くか山に入るたびに、帰ってこられないかもしれないと覚悟した。父に殺されると思ったのだ。口封じのために......」

ステュディーによると、ドナルドは遺体に土と灰汁(あく)をかぶせるよう子供たちに命じることもあったそうだ。

ドナルドは2013年3月に75歳で死んだ。30年間にわたって50~70人の男女を殺したという娘の証言が事実なら、人知れず世を去ったこの男はアメリカの犯罪史上で最悪級の連続殺人犯ということになる。

女性たちを自分の所有地に誘い込み...

今年10月21日、ステュディーは捜査現場であるアイオワ州サーマン郊外の低木地帯にいた。フリーモント郡保安官のケビン・アイストロープとその部下2人、そして探知犬の訓練士と犬2頭が彼女に合流した。「あの一帯に遺体があるという彼女の話は100%信用できる」と、アイストロープは本誌に断言した。

片方の手の甲にLOVE(愛)、もう一方にHATE(憎悪)とタトゥーを入れていたドナルドは、オマハ近辺で知り合った女性たちを山と農地から成る2ヘクタールほどの自分の所有地に誘い込んで殺害した、とアイストロープらはにらんでいる。

ステュディーによると、ドナルドは4人の子供たちに自分がしていることをはっきり分からせようとした。「あの性悪女にはこれが当然の仕打ちだ」などと、子供たちの前で被害者を罵ることもあったという。被害者の女性は全員白人で、家出した15歳の少女が1人いたが、ほとんどは20代か30代だったと、ステュディーは本誌に語った(なお彼女は、結婚後の姓を伏せて旧姓のみを出すという条件で取材に応じた)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OECD、世界経済見通し引き上げ 日本は今年0.5

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中