最新記事

「日本は森に囲まれている?」アマゾン熱帯雨林に匹敵する森が、海の底にあった

2022年11月10日(木)18時15分
松岡由希子

<西オーストラリア大学の研究で、海藻や海草が繁茂して群落を形成する「藻場」の面積はアマゾン熱帯雨林に匹敵し、生産性が極めて高いことが明らかとなった......>

沿岸域で海藻や海草が繁茂して群落を形成する「藻場」が世界各地に広がっている。その面積はアマゾン熱帯雨林に匹敵し、生産性が極めて高いことが明らかとなった。

豪州の西オーストラリア大学の研究チームは、これまでに発表された研究論文や観測データなどをもとに、藻場の分布をモデル化した。2022年5月5日付で学術雑誌「グローバルエコロジー&バイオジオグラフィー」に掲載された研究論文によると、藻場の面積は地球全体で606万~722万平方キロメートルと推定される。これはインドの国土の約2倍に相当し、アマゾン熱帯雨林に匹敵する大きさだ。

OceanForestsOfTheWorld-642x324.jpgscience

小麦や米、トウモロコシなどの作物の2~11倍の生産性

研究チームはさらに、海底面積あたりの海藻の純一次生産量(NPP)に関する研究論文288本をもとに、温度や光、栄養、波浪露出度などの変数によって藻場の生産性がどのように変化するかについてもモデル化した。その研究成果は2022年9月14日、学術雑誌「サイエンスアドバンシズ」で発表されている。

これによると、藻場は、集約農業で生産される作物よりも生産性が高いことがわかった。陸上の森林の生産性は熱帯地域でピークに達するのに対し、藻場の生産性は年間平均水温が10~18度の温帯地域で最も高くなり、面積あたりのバイオマス(生物体量)は小麦や米、トウモロコシなどの作物の2~11倍にのぼる。

世界の食糧安全保障や持続可能性の向上に寄与する可能性

藻場の高い生産性は、世界の食糧安全保障や持続可能性の向上に寄与する可能性がある。沿岸部で海藻養殖を拡大すれば、陸上での食料生産を補完できるだろう。

藻場は光合成で大気や海水中の二酸化炭素を吸収しながら成長する。その一部が固定化されれば、気候変動の緩和につながる可能性もある。自然界で藻場の炭素がどれくらい固定されるのかについては現時点では解明されておらず、今後の研究が待たれる。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中