最新記事

UAE

日本人が知らない、観光都市ドバイを造った「現代の奴隷」

2022年5月4日(水)18時20分
岩辺智博(本誌記者)
今年2月にオープンしたドバイ未来博物館のファサードを清掃する労働者たち

ドバイ未来博物館のファサードを清掃する労働者たち(2021年6月9日) Christopher Pike-REUTERS

<労働人口の大半を占めるアジアやアフリカから単身やってきた出稼ぎ労働者たちは、「ドバイ」から連想される煌びやかな都市生活とは無縁の日々を送っている>

超高層ビルが林立するアラブ首長国連邦(UAE)の中心都市ドバイ。

今や観光地としても人気だが、その発展を支えるのは労働人口の9割以上を占める外国人だ。インドなど南アジア系が最も多く、東南アジアやアフリカ、他の中東諸国出身者もいる。

自国籍保持者が富と福祉を享受する一方、出稼ぎ労働者はそんな権利とは無縁の生活を送っている。建設労働者は酷暑の屋外で働き、二段ベッドが所狭しと置かれた部屋で眠る。2017年には国際機関が、UAEの外国人の労働環境は世界最悪だと指摘した。

問題の元凶が「カファラ」と呼ばれる制度だ。雇用主が労働者の保証人となる契約で、現地に到着するなりパスポートを没収したり、賃金未払いは当たり前。パンデミックでは真っ先に彼らを解雇した。

特に弱い立場に置かれているのが女性の家事労働者だ。処遇は全て雇い主のモラル次第。住み込みで長時間労働。休日はなく、外出すら許されない例もある。携帯電話を取り上げられることも珍しくない。人権団体には、命からがら脱出した女性から虐待や性的暴行の証言も寄せられる。

彼ら「現代の奴隷」の姿がツーリストの目に入らないのも観光都市として一流の証拠か。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中