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女性の政治参加が進まない背景にある、日本の社会科教員の女性比率の顕著な低さ

2022年2月9日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

海外の諸国ではどうか。国際比較は中学校段階でしかできないが、アメリカの社会科担当教員の女性比率は61.8%で、日本の26.1%よりだいぶ高い(OECD「TALIS 2018」)。中学校教員全体の女性比率は順に65.8%、42.2%で、アメリカの社会科教員の女性比率は全教員と近い。だが日本はそうでなく、全教員の女性比率は42.2%なのに社会科教員では26.1%でしかない。このズレに、女性が社会科教員になりにくいことが表れている。

<表1>は各主要国のデータだ。ドイツは「TALIS 2018」に参加していない。

data220209-chart02.png

全教員と社会科教員の女性比のズレだが、日本以外の国では接近している。女性が社会科教員にどれほどなりやすいかは、後者を前者で割った値で可視化される。男女で均等なら表のaとbは等しくなり1.000となるが、日本は0.618で通常の期待値を大きく下回っている。対してニュージーランドは1.000を超えていて、男性より女性が社会科教員になりやすい傾向にある。

日本の中高の社会科教員の女性比率は低いのだが、国際比較のデータをみると「自然なこと、致し方ないこと」と割り切ってはならないのは明白だ。こうなるとアファーマティブ・アクションの考えのもと、女性の社会科教員の採用者を意図的に増やすことも必要になる。政治分野でのジェンダー平等を促すというビジョンにおいてだ。

中高では教科担任制だが、各教科の内容を教壇で説く教員の性別構成は、生徒の職業志向に少なからず影響を及ぼす「隠れたカリキュラム」と言える。<図1>で各教科の担当教員の性別構成を見たが、これは社会の職業構成と対応している。高校生にとってロールモデルの影響は大きい。

ジェンダー平等の要因は数多くあり、大きくは社会の文化といった抽象度の高い次元に還元されるが、まずは政策で変えやすい部分にまで降りてみることだ。学校の教員のジェンダーアンバランスはその最たるもので、まずはこの部分から人為的に変えていく必要がある。

<資料:文科省『学校教員統計』(2019年)
    OECD「TALIS 2018」

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