最新記事

日本社会

女性陸上アスリート赤外線盗撮の卑劣手口 肌露出多めのウェア着ている選手が悪いのか?

2020年11月21日(土)13時53分
酒井 政人(スポーツライター)PRESIDENT Onlineからの転載

女子アスリートの周囲にはチーム関係者や、純粋に競技の写真を撮影している人がいる一方で、女子選手の胸元や下半身に狙いを定めている不届きなカメラマンもいる(写真はイメージ) iarti / recep-bg -iStockphoto


ユニフォームが肌露出の多いデザインになっている陸上の女子選手の胸元や下半身に狙いを定める盗撮まがいの"カメラマン"が問題になっている。写真がネットで拡散されるなどの被害が出ている。スポーツライターの酒井政人氏は「競技団体は不審者がいないか競技場内を巡回するなど対策しているが、いたちごっこが続いている。最近は赤外線カメラを活用した卑劣な手口も現れた」という──。

陸上女性選手を悩ませる「盗撮被害」のひどい実態

女子アスリートが性的な"視線"を受けて、プレー中の卑猥な写真がインターネットで拡散される被害が問題になっている。特に狙われているのが肌の露出が多い陸上選手だ。

そこで筆者はかつてメディアに「美女アスリート」としてしばしば取り上げられていた元選手のAさんに話を聞くと、想像を超えるような苦悩を抱えていたことを知った。彼女たちの心の闇を多くの方に理解していただきたいと思う。

陸上競技のスプリント種目や跳躍種目の公式戦は、今や上半身と下半身が別れたセパレートのユニフォームがスタンダードになっている。上はカップつきウエアで、下はピタピタしたブルマのようなかたちが多い。このスタイルが国内で広まり始めたのは2003年ごろだ。

それまでは、どの種目でもランニングシャツ&ランニングパンツ(もしくはタイツ)を着用していた。しかし、セパレート型のユニフォームを着ていた選手が活躍すると、そのスタイルが一気に拡大。近年は全国大会になると短距離、ハードル、跳躍種目の大半はセパレート型のユニフォームを着用している。

無防備な選手の胸元や下半身に狙いを定める不届き者

女子選手の肌露出が増えるのと同時に、デジタルカメラも普及。いつしか陸上の女子選手は"カメラ小僧"のターゲットになるようになった。観客スタンドから望遠レンズを女子選手に向けているファンが何人もいるのだ。

チーム関係者や、純粋に競技の写真を撮影している人がいる一方で、女子選手の胸元や下半身に狙いを定めている不届きなカメラマンもいる。

「望遠レンズで狙われていても気づかないですし、そもそもそういうことを頭に入れないようにしています。気になると、競技に集中できませんから」(Aさん)

カメラマンたちは"無防備"な選手たちを執拗に追いかけているわけだ。

日本陸上競技連盟、日本学生陸上競技連合などの各団体は数年前から観客スタンドにいるカメラマンの動きに注視している。スタート位置後方など、特別に許可をとった者しか撮影できないエリアを設置。大会関係者は不審者がいないか競技場内を巡回しており、ときおり声をかけられているカメラマンも見かける。時には画像の消去を求められ、悪質な場合は警察に通報することもあるという。それでも完全に"盗撮カメラマン"を排除できないのが現状だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、

ワールド

米大学の反戦デモ、強制排除続く UCLAで200人

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中