最新記事

子ども

「赤ちゃんポスト」で遺体発見のドイツ、注目の「内密出産」とは? 

2017年12月13日(水)18時30分
モーゲンスタン陽子

「赤ちゃんポスト」や「匿名出産」が批判される理由の1つに「子供の『親を知る権利』を侵害している」というものがあるが、この点、母親の情報が保管される「内密出産」では、子供が16歳になり、生みの親を知る権利を得たときに、情報を開示することによりその権利を保障できる。「匿名」より「内密」が奨励される理由だ。

希望すれば誰もが「内密出産」を選択できるわけではない。あくまでも子供と生活する道を選ぶことを政府が奨励できるように、女性は出産前に「包括的で、敷居の低く、オープンで偏見のない」カウンセリングを受けねばならない。また、法令では「人生、健康、個人的自由、そして同様の正当な懸念にリスクをもたらす可能性がある」ことも証明しなければならない。

政府の発表によると、2014年から今年夏の時点で355人の女性が「内密出産」を選択したという。ひどい個人的苦痛や暴力を経験してきた女性たちだった。昨年9月までにカウンセリングを受けた1277人の女性のうち、26%が結果的に通常の出産をし、子供と一緒に暮らしていくことを決断、15%が養子縁組、19%が内密出産、そして40%が中絶など他の選択肢を選んだという(ツァイト)。

前出のアポルダ病院でも、2014年の全国での法施行以来、「内密出産」および「匿名出産」に対応できるよう、専門のスタッフを雇用、訓練し、内部での情報交換、またカウンセリング当局との連携をはかって体制を整えている。まずは「内密出産」を選ぶよう説得し、母親が拒否すれば「匿名出産」にも対応するが、実際にこれらを選択した女性はこれまでにないという。

いずれにしても、たった一人で嬰児を産み落としポストに預ける女性たちとは異なり、病院での出産なら母子ともに必要な医療ケアやアドバイスが受けられる。何のサポートもなく一人悩む女性たちにとって、偏見なく対応してくれる専門家の存在は精神的・肉体的に大きな助けとなるのではないか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中