最新記事

半導体

トヨタも注目 半導体エヌビディアがAIの立役者になった理由

2017年6月2日(金)11時16分
東出拓己(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

GPU(画像処理用半導体)大手の米エヌビディアは世界中から開発者を集めた会議「GTC」を、米国シリコンバレーで開催した(記者撮影)

「本日、トヨタ自動車が当社製品を採用したと発表できることを大変光栄に思う」

画像処理用半導体(GPU)大手、米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、トレードマークの革ジャンに身を包んで興奮気味に語った。「TOYOTA」の文字がスクリーンに映し出されると、会場から歓声が上がり、大きな拍手が起こった。

2017年5月8日から11日までの4日間、エヌビディアは米国シリコンバレーで開発者向け会議「GPU Technology Conference(GTC)」を開催した。基調講演の場で、フアンCEOはトヨタ自動車との協業を発表。自動運転車の開発に共同で取り組み、今後数年以内での市場導入を目指す。「トヨタはまさに伝説的な企業。カイゼン、現地現物、ジャストインタイム生産など、現代経営システムの多くがトヨタによって発明された」(フアンCEO)。

名門自動車メーカーから引っ張りだこ

エヌビディアと組む自動車メーカーはトヨタだけではない。GTCの会場に入ると、まず独アウディ製のSUV(スポーツ多目的車)が目に飛び込んできた。もちろん、エヌビディア製品を搭載した自動運転車だ。エヌビディアはすでに、独BMWや米テスラなどさまざまな自動車メーカーと提携を進めており、まさに"引っ張りだこ"といえる状況だ。

toyokeizai170602-2.jpg

エヌビディアのGPUを用いて、独アウディが開発した自動運転のSUV(記者撮影)

エヌビディアは今、世界で最も注目されている半導体企業といっても過言ではない。主力製品のGPUは、従来テレビゲームなどで画像を映し出すために用いられてきた。そのGPUが、最新の人工知能(AI)技術、「ディープラーニング(深層学習)」での情報処理に適していることがわかり、世界中から注目を集めている。

期待度の高さは、時価総額を見れば明らかだ。2016年初めの同社の時価総額は約1兆7700億円。それが2017年5月29日時点では約8兆4200億円まで急騰している。日本国内に当てはめれば、トヨタ(19兆4800億円)、NTT(11兆円)、NTTドコモ(10兆6000億円)、三菱UFJフィナンシャルグループ(9兆8800億円)、ソフトバンク(9兆6000億円)に次ぐ6位の規模だ。

エヌビディアの大躍進は、フアンCEOというカリスマ経営者の手腕による部分が大きい。台湾出身のフアン氏は、スタンフォード大学で電気工学修士号を取得した後、1993年にエヌビディアを設立した。

そんなカリスマ経営者が大事にするのが、以下の3つのような経営哲学だ。

「Be a learning machine (学び続ける機械であれ)」

「Be intellectually honest (知的に誠実であれ)」

「Measure yourself against the speed of light ("光速"と自分を比較せよ)」

フアン氏は日々、社員に対して口を酸っぱくして言い聞かせている。

学び続ける機械であれ――。半導体業界は極めて変化の激しい業界だ。家電、パソコン、スマートフォン、自動車と次々に主戦場が移り変わる。つねにアンテナを張り巡らせ、世の中の技術トレンドを追い続ける必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明

ワールド

ジョージア、デモ主催者を非難 「暴力で権力奪取画策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中