最新記事

キャリア

能力が低いから昇進できない、という人はめったにいない

2016年5月10日(火)17時22分

 明確で、効果的な話し方とは、あなたの話したいことを、聞き手があなたの望むように聞き、受け入れ、行動するように話すことだ。

 たとえば昇給してほしいなら、上司のところに行って「私は給料が上がって当然のことをしたと思うので、上げてください」と言うよりも、こう言ったほうがいい。

「今年は私の昇給を検討していただきたいと思います。理由は3つあります。私はこの部で最大級の3つのプロジェクトに大きく貢献し、X千ドルの売上をもたらしました。それから新人社員○人のリクルートを積極的に行い、入社させました。これは部の今年最大の目標でもあります。最後に経費削減計画で、全社でY千ドルを節減することに助力しました」

 どちらの表現も直接的だが、2番目のほうが、あなたが昇給を求める理由と、その正当性をはっきりと上司に伝えている。2番目の例のほうが明快に、簡潔に、よく考えられた発言で、筋も通っているから、まじめに検討されるはずだ。それに対して最初の例は、直接的だが、正当な理由も論拠もない。

 とくに上級職の人と話すときは、単刀直入で、簡潔なコミュニケーションを心がけよう。根拠や考え方を十分に示す必要がないと言っているのではない。あなたの要求や意見の範囲を超える、よけいな説明はしないようにと言っているのだ。自分の取り組んでいるプロジェクトについて上司に報告するなら、その目標と、業務遂行の中で生じた変更、成果について話す準備をしよう。どのようにして成果を出したのか、どのようなプロセスを用いたのか、元来の分析ではどのような前提だったのかなどを話そう。それから、いったん話を止めて、質問や意見を求めよう。必要な回答をしてから、再び報告に戻ろう。

 こうした点について話すのは重要だが、自分の頭の良さを示そうとして必要のない細部にはまらないように注意してほしい。たとえば、なぜこの仮定を選び、他の4つの仮定を採用しなかったかとか、なぜこの方法を採用し、他の2つは利用しなかったのかなど細かい解説は必要ない。上司は結論を知りたがるものだ。別の分析ができたかもしれないと思えば、上司のほうから質問するだろう。

 これは、私が身をもって体験したことだ。若かった私は、与えられたほんの一部の分析作業をした際に、自分がいかに優秀か、いかに徹底した分析を行ったかを示したいと思った。チームとして上司に報告するとき、私は結論を出すためにかなりの作業をしていたので、自分が報告することに固執した。

 私は分析の背景から、情報を集めるのにかかった時間、結論を出すのに利用したあらゆる情報源、データの問題点、などを事細かく説明していった。15分ほど説明した時点で、上司が口をはさんだ。「で、結論は何なんだ?」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

アングル:バフェット後も文化維持できるか、バークシ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中