最新記事

韓国社会

土地価格高騰の韓国、トレンドは「借金して投資」 30代の切実な家計事情

2021年9月1日(水)18時38分

昨年、40歳未満の人が購入した集合住宅は27万2638戸で、前年比77%近く増加。40代の64%と50代の63%よりも高い伸びを示した。30代は収入に対する借金の比率が世代別で一番大きく、債務総額は年間収入の約270%となっているため、重大なリスクにさらされていることが中銀のデータから分かる。

規制強化で住宅ローン停止も

融資ブローカーに聞いたところ、より多くの顧客が金利の高い貸し手に流れている。これは最終的に家計の状況を悪化させ、韓国GDPの半分前後を占める個人消費に打撃を与えるだろう。

大信証券のエコノミスト、コン・ドンラク氏は「銀行が融資を切るとともに、資金を必要とする人々は他の方法を模索する。まず両親に頼り、次いで規制を回避しようと金利の高い貸し手に向かって、最後はより大きなリスクを抱えてしまう」と指摘した。

税制変更や融資規制など数々の対策を打ち出しても不動産投機を抑え込むことができなかった政府は先月、とうとう国民にどうか積極的に借金をするのをやめてほしいと懇願までしている。

そうした中で7月に韓国金融委員会(FSC)は、個人が利用できる銀行融資の上限を収入の40%までに限る規制強化策を実施。債務問題が金融安定を脅かすようなら、さらに規制を厳しくすると表明した。

これに呼応して国内の銀行は融資制限に乗り出している。労働者や農家がよく利用する農協銀行は先週、住宅ローンと敷金向け融資を停止。ウリィ銀行も、9月末まで住宅ローンの新規承認を凍結した。ネット専業のカカオバンクも、融資制限を検討中という。

ただこれらの締め付けにより借り手は、規制対象から外れた高金利の金融業者へと走っている。

スタンダード・チャータード銀行韓国法人の融資担当者は「最高の信用スコアを持つ多くの取引相手はカードローンに移行している。なぜなら私が彼らの融資申請を却下せざるを得なかったからだ」と述べた。

中銀の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は7月、政策委員のほとんどが金融の不均衡問題を優先的に取り組むことに同意しており、政策調整は住宅市場の投機抑制に役立つと発言。またFSCの委員長に決まった高承範(コ・スンボム)氏は先週、家計債務の管理が自身にとって最優先課題だとし、対応を約束した。

もっともパクさんからすれば、融資規制強化は購買力を低下させるという皮肉な構図を生み出す。「家賃も株も何もかも値上がりしている半面、給料は増えない以上、もっと多くの借金をしたい。なぜ政府はこの事実が分からないかが理解できない」という。

(Cynthia Kim記者、Joori Roh記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中