最新記事

コロナバブル いつ弾けるのか

コロナ禍の東京で「不動産バブル」が始まる?

A TOKYO REAL ESTATE

2021年2月3日(水)19時15分
長嶋修(不動産コンサルタント、さくら事務所会長)

コロナ禍の中で東京の不動産市場への投資額が世界トップに EASYTURN/ISTOCK.

<史上空前の財政出動、金融緩和によって市場にあふれる世界の投資マネー。次の標的になるのは東京の不動産市場だ>

(本誌「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より)

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界の主要都市の不動産市場が軒並み大打撃を受けるなか、割安感がある東京の不動産に海外の投資マネーが流れ込んでいる。

NWcover210209.jpg国際不動産サービス会社ジョーンズ・ラング・ラサールの調べによると、2020年第2四半期の世界の商業用の不動産投資額は、渡航制限、経済への打撃、先行き不透明感などが影響して、前年同期比で55%減の1070億ドルに激減した。

ところが、東京だけは投資の勢いが衰えていない。都市別投資額を見ると、2020 年第1四半期に続いて上半期も、東京が前年並みの150億ドルで世界トップに躍り出た。2位のニューヨークは109億ドルで4割減、3位のパリは83億ドルで3割減といずれも減少。落ち込みの大きい都市では、ロサンゼルスの54%減、上海の48%減などが目立っている。

2020年1~9月期の都市別投資額のまとめを見ても、東京は194億ドルで引き続きトップを維持。そしてやはり東アジアの韓国・ソウルが142億ドルで2位につけている。

コロナ禍で、日米欧とも史上空前の財政出動と金融緩和、とりわけ日米は国債の購入に制限を設けない無制限の量的緩和をアナウンスすることで、リーマン・ショックのような金融システム破綻は回避されている。当面の資金繰り不安がなくなると、市場には膨大なマネーが残る。

同時に日米欧はもちろん、新興国も一斉に利下げに動いた結果、世界中から金利が消えようとしている。

2020年11月の岡三証券のリポートによると、主要20カ国のうち、1年物金利がマイナスになったのは日欧の14カ国。アメリカやカナダ、オーストラリアでも6年物まで年0.5%以下に下がり、明確なプラス水準を維持しているのは中国とインドだ。

国債・社債が運用益を生まなくなった今、あふれるマネーをどこに振り向けるのか。各国の不動産は有望な選択肢ではあるが、大きなリスクは取れない。そこで相対的にコロナの被害が少なく、経済への影響も小さかった日本、特に東京の不動産に投資が向かうのは必然とも言える。

トップ15%の局地的バブル

東京の不動産市場に関心を持っているのは、かつては主に香港、シンガポールなどアジア系資本だった。しかしコロナ以降で目立つのが欧米系資本の増加だ。都心の中古のオフィス物件などの購入に積極的に動いている。いま分かっているだけでも、今後兆円単位の投資マネーが東京の不動産市場に流入する見込みだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中