最新記事

中国経済

中国からの資本流出、食い止めが困難な理由

M&Aの形態の資金流出を抑制すると、戦略的な投資まで阻むことになるというジレンマ

2016年1月26日(火)11時45分

1月25日、中国が政策対応の面で今最も頭を悩ませているのは、企業や個人が一斉に資金を海外に移動させている状況だ。北京で21日撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

 中国が政策対応の面で今最も頭を悩ませているのは、企業や個人が一斉に資金を海外に移動させている状況だ。

 国内不動産市況の冷え込みや株安も、海外への資金流出を助長している。そして流出額が積もり積もって相当大きくなれば、政策担当者にとっては国内の借り入れコストの引き下げ努力が無に帰するばかりか、生産的な投資に充当すべき資金不足の問題が再燃するリスクがある。

 一方で資産運用会社は、資金流出の流れを商機にして利益を稼いでいる。ある運用会社のトップは昨年12月終盤に開いた顧客向け説明会で、中国経済が早晩上向くことがなく、海外投資に妙味があるという理由をいくつか挙げた。それは高齢化の進行や人民元の対ドル相場下落が続いていることなどだ。

 このトップは、香港の富豪である李嘉誠氏が中国資産を圧縮して西欧で公益や通信などの資産を購入している動きも引き合いに出した。

合法化

 中国が人民元高局面で随時進めてきた改革のおかげで、国内企業や個人投資家はかつてないほど合法的に海外に資金を移せるようになった。

 彼らは不動産や外国株・債券などを買えるし、さらなるローンの担保にできる外国保険を購入したり、外国企業を丸ごと買収することさえ可能だ。

 投資先は欧州にとどまらず、上海の投資会社の証大は国内投資家の資金をアフリカの鉱山や不動産、天然ガスプロジェクトなどに振り向けることを計画している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、4月は49.4 1年4カ

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中