最新記事

崩壊危機でもユーロに参加する事情

ソブリンリスク危機

アメリカや日本にも忍び寄る
ギリシャ型「政府債務信用不安」の実相

2010.07.05

ニューストピックス

崩壊危機でもユーロに参加する事情

2010年7月5日(月)12時00分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局)

 ユーロ圏の崩壊を危ぶむ声も聞かれるなか、ユーロ擁護派が勢いづく決定が発表された。エストニアが導入基準を満たしたとして、正式参加を7月に認められる見通しとなったのだ。これでユーロ導入国は17カ国になる。「ユーロ圏を脱出する国々の行列などない。参加を待つ行列があるだけだ」と、オリ・レーン欧州委員(経済・通貨問題担当)は誇らしげに語った。

 もっとも、エストニアには特殊な事情がある。既に通貨クローンはユーロに連動しており、ユーロを導入した場合と同様のリスクを経験している。しかも貿易頼みの小国にとって、主要通貨圏に入ることは魅力的な選択肢だ。

受け入れ側も消極的に

 これとは対照的に、他の未参加国はますます及び腰になっているようだ。イギリスとデンマークを除くすべてのEU(欧州連合)加盟国は、必要な経済条件を満たした時点でのユーロ導入を義務付けられている。しかし、ポーランドやチェコでは導入支持の世論が約40%にまで低下し、政府は導入延期を打ち出している。

 腰が引けているのは受け入れ側も同じだ。「ギリシャの亡霊にたたられて、新メンバーの受け入れに非常に消極的になっている」と、欧州改革研究所(ロンドン)のサイモン・ティルフォードは言う。

[2010年6月 9日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産

ビジネス

焦点:米国市場、FOMC後も動揺続く恐れ 指標の注

ビジネス

住商、マダガスカルのニッケル事業で減損 あらゆる選

ビジネス

肥満症薬のノボ・ノルディスク、需要急増で業績見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中