コラム

動き出した2024年米大統領選、現時点での情勢は?

2023年02月22日(水)16時15分

つまり、主張は完全に「アンチ・トランプ」ですが、ストレートなトランプ批判はせずに、「バイデン批判」を展開するという変化球作戦というわけです。一部には、彼女なりに「トランプ票を取り込む」作戦であると同時に、トランプが候補になった場合に「懲りずに」副大統領候補への指名を狙っているという説もあります。

ヘイリーの動きが活発になると同時に、一部では本命視されているフロリダのデサンティス知事も動き始めました。デサンティスはまだ出馬宣言はしていませんが、ここへ来て「治安悪化に苦しんでいる北部の3都市」つまり「シカゴ、フィラデルフィア、ニューヨーク」のそれぞれ郊外を訪れて「犯罪に対する毅然とした姿勢」をアピールしていました。これはメディアでも大きく取り上げられています。

つまり、共和党サイドでは、44歳のデサンティスと、51歳のヘイリーが大統領選へ向けて活発に活動し、議会下院では58歳のマッカーシー下院議長が始動しています。こうなると、80歳のバイデン氏との「年齢差」はやはり顕著です。言い方を変えれば、世代交代の進む共和党に対して、バイデンを担ぐことは民主党にとってはリスクになります。

もちろん、共和党の側にもトランプという高齢候補がいますが、その存在感は日々低下してきています。トランプが今後の予備選で、どのような動きをするかは未知数ですが、現時点では、やはり「若い共和党」対「高齢のバイデン」という対立構図が浮かび上がっています。

この状況に、民主党が「あくまで現職バイデン」で行くのか、それとも世代交代を図るのか、その場合は「バイデン出馬断念」という形を取るのか、「バイデン辞任でハリス昇任」とするのか、あるいは泥沼の予備選に突入するのか、現時点は「嵐の前の静けさ」という感じになっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相答弁の撤回要求 日中外務高官協議

ビジネス

高市首相と会談、植田日銀総裁「利上げは今後のデータ

ビジネス

英中銀、投資銀業務分離規制の一部緩和検討か 抜本改

ワールド

経済対策、「しっかり必要な額」求める声多く=自民政
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story