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「危ない人」は無理でも「危ない場所」なら対策できる──地域安全マップで身に付く防犯知識
もっとも、地域安全マップは、あくまでも大学生の実習用教材として考案したものであり、それを広めようなどとは、全く思っていなかった。それどころか、地域安全マップの実習で、学生がどこまで集中力を維持できるのかという不安が大きかった。つまり、考案当初は、地域安全マップが作製者を夢中にさせることに、筆者自身も気づいていなかったのである。それに気づかされたのは、実習地、三原での出来事だった。
実習計画を練る段階から、学生は、街を歩き回ることに飽きるのではないかと思っていたので、レクリエーションとして、調査が終わったら、かんきつ類を題材にしたテーマパーク(遊園地)に、学生を連れて行くと約束していた。レクリエーション当日、警察との意見交換会が翌日に控えていたので、テーマパークに到着後、まずはレストランに入り、班ごとに意見をまとめるよう、学生に指示した。まとめが終わったら遊んでいいというわけだ。
筆者は、レストランにいる必要がなかったので、一人で施設を見て回っていたが、かなりの時間が過ぎても、学生はだれも外に出てこなかった。どうしたのかと思って、学生リーダーに電話してみると、すべての班が議論を続けているというのだ。せっかくテーマパークに来たのだから、議論を切り上げて外に出るよう指示した。しかし、いつまで待っても、だれも出てこない。閉園時間が迫ってきたので、たまらずレストランに戻り、無理やり学生を連れ出した。
結局、学生は3時間近く、地域安全マップをめぐって、レストランで話し合いを続け、外で遊んだのはわずか20分程度だった(写真)。学生が取った、この一見奇妙な行動が、重大な気づきを与えてくれた。それは、地域安全マップづくりは、テーマパークで遊ぶことよりも面白いのではないか、そして、大学生をこんなにも夢中にさせる地域安全マップなら、子どもも楽しみながら取り組めるのではないか、ということだ。
三原での地域安全マップづくりの模様は、中国新聞によって広く紹介された。また、報告書『地域安全マップと安全・安心まちづくり――大学生によるフィールドワーク報告書――』を、全国の警察本部に送付した。しかし、どこからも、地域安全マップの相談や依頼は来なかった。
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