コラム

2年乗った車が購入時よりも高く売れるアメリカ、限度を超えたインフレの行方

2022年06月28日(火)13時43分

220705p22_CAL_02.jpg

FRBのパウエル議長は0.75%の利上げに踏み切った ELIZABETH FRANTZーREUTERS

11月の中間選挙では、多くのアメリカ人がガソリン価格高騰への怒りを胸に投票所へ足を運ぶことになるかもしれない。バイデンと民主党にとっては厳しい審判を突き付けられる可能性がある。

しかし、どの党の政権であれ、インフレに対して短期的にできることは多くない。それでもバイデンは5月末にFRB(米連邦準備理事会)のジェローム・パウエル議長と会談し、「インフレ対策が経済の最優先課題」だと強調した。

FRBは金融政策への政治の介入を防ぐため、政権からの独立性を与えられている。だがパウエルもまた、40年ぶりの高インフレを抑え込もうと積極的に動き、利上げという切り札を切ってきた。

FRBは5月、フェデラル・ファンド金利(政策金利)を0.5%、6月には0.75%引き上げた。パウエルはさらに、7月にも0.5~0.75%引き上げる可能性があると示唆している。私が大学院で経済学を学んでいた1979年以来、最も積極的な利上げになるかもしれない。

これを受けて、政策金利に連動して動く住宅ローン金利は5%を大きく突破した。逆説的だが、こうした金利上昇は経済成長を抑制することで、やがてインフレ率を低下させる。

もちろん、景気を後退させるリスクもある。バイデンとアメリカにとっては物価高以上の悪夢だ。

政策金利の引き上げは副作用も大きく、速効性に欠ける。インフレ率に実質的な影響を与えるには、18カ月ほどかかるだろう。つまり、FRBの利上げがインフレと経済活動を抑制するのは、2024年11月の大統領選前後ということになる。

この問題で重要なのはバイデンとパウエル、特にパウエルが景気後退を避けながら、インフレを低下させることに成功するかどうかだ。

景気の健全性やトレンドを見極めるには、失業率とGDPも考慮しなければならない。現在アメリカの失業率は3.6%。1969年以来の低水準で、エコノミストが「完全雇用」と見なす4%を下回っている。

このレベルになると、雇用主側は不足する労働者を獲得するために賃上げせねばならず、それがインフレを招き、ひいては景気後退につながる。

一方、アメリカのGDPは21年に5.7%と1984年以来の高い伸びを示した。米議会予算局(CBO)は22年も3.1%のプラス成長を予測している。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=

ビジネス

ECB、利下げの必要性でコンセンサス高まる=伊中銀

ビジネス

G7、ロシア凍結資産活用は首脳会議で判断 中国の過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 7

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 10

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story