コラム

「宇宙で同期と待ち合わせ」が実現! その舞台「ISS」を知る7つのキーワード...日本の貢献、日本人宇宙飛行士の活躍

2025年08月08日(金)22時25分

油井さんは、搭乗前の記者会見で「大西さんと一緒にやりたいこと」として「髪の毛をカットし合うパフォーマンス」をほのめかしていたが、実際の油井さんは「バーバー大西」を牽制するあまり、まさかの坊主頭でISSに搭乗した。

その代わりのコラボ企画として、5日にはX(旧ツイッター)を用いて、二人がISSから日本上空を撮影した写真を使って、どちらがより好評かを競うユーザー参加型のコンテストが開かれた。最終的に11200票の投票があり、ISSの一部をより鮮明に写り込ませた大西さんの写真が投票率で約15%の差をつけて勝利した。


6.もう1人の同期の絆

大西さんと油井さんは、08~09年の宇宙飛行士選抜試験で963人の応募者から選ばれた同期の宇宙飛行士(この試験で、大西さん、油井さん、金井さんが選抜された)として知られているが、今回のISSミッションには「もう1人の同期」が大きく関わりそうだ。

2人と同じ宇宙飛行士選抜試験で10人のファイナリストの1人として選ばれたJAXA職員の内山崇さんは、油井さんや大西さんとともにJAXA筑波宇宙センター内の閉鎖環境で最終試験を受けた。大西さんとは東京大学工学部航空宇宙学科で同じ研究室の同級生でもある。

宇宙飛行士選抜試験後、内山さんは09年初号機から20年の最終9号機まで「こうのとり」のフライトディレクタとして活躍し、ISS輸送ミッションの9機連続成功に貢献した。現在は、HTV-Xの自動ドッキング技術実証プロジェクトのファンクションマネージャに就いており、ISSを地上から支えている。また、Gateway向けHTV-XGや有人宇宙船検討など、将来のHTV-X発展化の検討にも携わっている。

大西さんは記者会見で、今回のミッションで心残りなこととして、EVA(船外活動)ができなかったこととともに到来の可能性があったHTV-Xが見られなかったことを挙げている。

今回、2度目のISS滞在に臨む油井さんについて、内山さんは「到着初日からバリバリ任務をこなしていてパワフルだと思いました。10年前に比べ、衰えるどころかパワーアップしていると感じます」と語ってくれた。

さらに「ISS長期滞在はマラソンですので、あまり飛ばし過ぎずに!というのと、同期である大西飛行士と一緒の滞在期間を精一杯楽しんで!という相反する思いがあります」と"同期"の2人に思いを馳せていた。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、7月は前年比横ばい PPI予想より大幅

ワールド

米ロ首脳、15日にアラスカで会談 ウクライナ戦争終

ビジネス

トランプ大統領、内国歳入庁長官を解任 代行はベセン

ビジネス

アングル:米関税50%の衝撃、インド衣料業界が迫ら
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何か?...「うつ病」との関係から予防策まで
  • 3
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トップ5に入っている国はどこ?
  • 4
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    今を時めく「韓国エンタメ」、その未来は実は暗い...…
  • 10
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story