コラム

AI時代にGAFAへの一極集中はありえない

2019年05月15日(水)17時45分

──なるほど。やはりAIが進化すると言う表現に非常にナーバスになっているのかもしれないですね。では、2つの知性がスパイラル上に共に進化していくような環境ってどのような環境になるのでしょうか?

辻井 AIベンチャーがクライアント企業であるメーカーなどに、AIの機能をクラウド上で提供するという形が今は進んでいますが、それだと横のつながりがうまくできないように思います。オープンイノベーションなどという言葉はありますが、実際にはあまりうまく機能していないように思います。

より密に混ざり合える環境。例えば医療関係者と、AIエンジニア、ビジネスマンが混ざり合えるような場をどれだけ作れるか。それがこれからは大事になってくるのだと思います。

つまり研究や技術開発の仕方がかなり変わるように思います。いや変えないとうまく行かなくなるんじゃないかって思います。

──具体的にはどのような環境でしょう?どのような環境にすれば2つの知性が影響を与え合いながら共に進化していくのでしょうか?

辻井 1つは、その領域の専門家、AIエンジニア、ビジネスマンがそろっている会社を作るということでしょうね。

もう1つは、そうした人たちが協調領域でうまくアライアンスが組める場。そういう場を作らないとだめなんじゃないかと思います。

そうしないと次の段階の技術は出てこないと思います。それはGAFAがやろうとしてもできないことだと思う。

──今のGAFAのモデルでは、次の技術が登場してこないのは、どうしてなんでしょう?

辻井 1つは、製造業も医療も、それぞれの領域に膨大なデータがある。そうした業界の権利を守る形でデータ利用の方法を作っていかないと、必要なデータは出てこない。

またもう1つは、現場の技術とAIとが互いに影響を与え合いながら共に進化していかなければならない。今のクラウド型サービスでは不可能です。

──人間の知性とAIの知性とが互いに影響を与え合いながら共に進化していく、という話に通じるものがありますね。例えば製造業で取れるデータを基に、AIがアルゴリズムを作る。そのアルゴリズムを有効に活用するために、製造過程を変えていく。製造過程が変われば新たなデータが取れるようになり、新たなデータをベースに新たなアルゴリズムを作ることができる。つまり現場の技術とAIとが互いに影響を与え合いながら共に進化していくわけですね。それが次のAIの進化の形。GAFAがやっているクラウド型AI提供サービスでは確かに無理ですね。

辻井 そうです。製造業などのステークホルダーの役割って、一般的に思われている以上に次のAIの進化において重要なんだと思います。つまりAI企業と製造業のチーム戦になる。もしくは国や社会の総力戦になってきているのではないかと思います。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story