コラム

「バカにされよう。主流はこっちだ」デジハリ杉山学長が考えるAI時代の教育とは

2018年02月16日(金)12時30分

──分かりました。今の現状と今後については、僕の認識と非常に近いように思います。それではここから本題なのですが、そんな時代に向けて教育はどうあるべきでしょうか?

杉山 学生には「皆さんを育ててきた人はコンピューターやネットがないときに価値観を作った人。大人たちは、いろんなことを言ってくるけど、ほとんど意味がないですよ」とよく言います。

デジタルネイティブと呼ばれるような人たちは、自分たちの感覚を信じて、未来を自分たちなりに作っていくのが一番いいと思っています。

幼いころに身につけた価値観やライフスタイルを変えさせるということは、並大抵のことではない。なので今日、年齢層ごとに価値観も世界観も違うのだと思います。多分一世紀分くらいの混乱期があるのではないかと思っています。

──若い人が新しい感覚を持っているのかどうか、僕はよく分からないですね。心の奥底に新しい感覚を持っているのかも知れないですが、多くの若者を見ていると大人と同じようなことを言っている人が多い。中には独自の価値観を持っていても、その価値観と社会の価値観の違いに苦しみ、自己否定に入っている人が多いように思います。一世紀分の混乱って、そういうこともおっしゃってるんですよね。

杉山 はい、そのとおりです。

──そういう苦しんでいる若者を救うのって教育しかないように思うのですが。

杉山 そうですね。デジタルハリウッドは、1994年に専門スクールを開校し、2004年に大学院を開学しました。そのときは、そうした若者の存在には気づきませんでした。もともと大学院には、新しい価値観に覚醒した社会人がやってきていたからだと思います。2005年に大学を開学してから、高校を卒業したばかりの人たちが入学してくるようになって、彼らに日々接してみてびっくりしました。日本の高校までの教育ってとんでもないことをしているのではないか、と感じました。

──どういうことでしょう?

杉山 おっしゃるような苦しんでいる若者が入学してきたんですね。言葉では、「個性を大事にする教育」と言っていても、日本の高校までの教育って実際には個性をつぶしているんじゃないかと思いました。大人に近づくにつれ「社会ってそういうものだ」「自分もそこに染まらなければならないだろう」「本当は違うんだけど、染まらないと生き延びられない」というような考えが非常に強く刷り込まれているように思います。特に日本はそうですよね。人と違うことを表現すると大変なことになる。それでもなんとなくうまくすり抜けられた子はいいですが、そうでないと自己否定に入る。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は

ワールド

米政権特使、ハマス副代表と近日中に会談へ=米紙
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story