コラム

シリコンバレーのリクルートAI研究所はチャットボットを開発していた

2016年11月07日(月)16時00分

 3つ目は、データ前処理の領域。最近のAIは予測モデルを自動的に作り出すことができるようになってきているが、問題はデータ。AIが理解しやすい形にデータを揃えたり、欠損データを埋めたりする前処理が、結構な作業量になる。そこでデータの前処理を自動化するツールの開発を急いでいるという。

「特に異なるデータを統合するデータインテグレーションに関してはオープンソースのプラットフォームを作るつもりだ」とHalevy氏は言う。同氏は、データインテグレーションの本を執筆するほどの専門家。安くて使いやすいプラットフォームを目指したいという。

人を幸せにするボット

 この辺りの研究開発は当然行っていると思っていたのだが、「それとは別にもう1つ。研究開発を進めているものがある」と同氏が語り始めた。

「実は、チャットボットを開発している。チャットボットが次のUI(ユーザー・インターフェイス。人間とコンピューターの接点)になるのは間違いないからだ」。

【参考記事】AIの新たな主戦場、チャットボットの破壊力

 またしてもチャットボットだ。前日に取材したAIのスタートアップもチャットボットを開発していると語っていた。前日夜のパーティーで知り合った起業家の何人かも、開発を進めているチャットボットの話をしていた。どうやらチャットボットは今、シリコンバレーで最もホットな領域のようだ。

 チャットボットは、FacebookメッセンジャーやLINEなどのメッセージングアプリ上で、まるで人間のように対話してくれるプログラムのことだ。

 電話やメールはなくならないだろうが、メッセージングサービスが今後ますます主要なコミュニケーションツールになるのは間違いない。それらのメッセージングサービスの上でユーザーの秘書のような役割をするチャットボットが今後主流になっていく、ということもほぼ間違いないだろう。

 チャットボットは日本にも先行する事例が幾つかあり、決して日本がシリコンバレーに遅れを取っているとは思わない。しかしチャットボットに取り組んでいる企業や開発者の数が、日本ではまだまだ少ないのが現状。

 取り組んでいる企業や開発者の層の厚さでは、やはりシリコンバレーとの間に圧倒的な差があるように感じた。

 さて、だれもがチャットボットを開発してくるのであれば、差別化はチャットボットの後ろにどのようなAIを搭載するのか、ということになるはず。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story