コラム

ウイグル弾圧の中国がサウジ皇太子を厚遇した訳

2019年03月09日(土)16時30分

トルコもサウジアラビアも時には「不信心な中国政府」と握手し、チャイナマネーに目がくらむ。互いを牽制しようと策略を巡らすこともある。それによって、「イスラム世界はウイグル人を見捨てるのでは」という懸念が高まっている。

しかし、両国ともに重視する民族的・宗教的「権威」がその懸念の歯止めになるかもしれない。トルコが過度に中国に傾斜すれば、トルコ系諸民族世界におけるリーダーの地位が傷つく。サウド王家が一帯一路の旗振り役を演じれば、現地のイスラム教徒を動揺させる。

中国が宿敵イランと長年友好関係を構築してきた事実も、サウジアラビアは把握しているはずだ。中国は民族浄化を隠蔽しようとイスラム世界のリーダーたちを利用しているが、そう簡単には進まないだろう。

<本誌2019年03月12日号掲載>

※3月12日号(3月5日発売)は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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