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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態


| 拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス。その闇と実態

ヨーロッパ全土には、さまざまな種類の拘置所や刑務所を管理するサービスを提供する多国籍企業が存在する。

2020年に、サルデーニャのマコマー本国送還のための拘留センターCPRの事業が発足した。
拘留施設は、スイスの持株会社である Orsイタリアによって管理されている。
Orsはイタリアを中心に、スイス、ドイツ、オーストリアを拠点としたホスピタリティ事業で、22もの刑務所施設のサービスを管理する多国籍企業だ。
昨年の売上高が約600億ドル(約8兆円)に達する巨大ビジネスである。

地域ネットワークの非営利団体ではなく、収益性の高い企業で、イタリア連帯コンソーシアム (Ics) とトリエステのカリタス財団が率いており、人材派遣会社アデコの分社として誕生したのが、このスイスのグループ傘下のOrsイタリアだ。
Orsイタリアは、特にスイス、オーストリア、ドイツで亡命希望者のために特化したセンターを運営しているという。

しかし、近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。
入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。
治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された。

2020年1月18日(土曜日)の早朝、ゴリツィアの本国送還のための拘留センターCPRで、37歳のグルジア人が死亡した。亡命希望者であった彼は、難民保護の資格を得るには必要条件を満たしていなかった。目撃者には「警備員に殴られた」とのことだ。
民間管理会社CPRからの情報が漏洩して判明したこともある。
収監されていた移民の自傷行為、自殺未遂、管理団体からの苦情、食べられない食事、衛生と健康、心理的援助における重大な欠陥、弁護権を行使することが困難、などである。そして、少なくとも3回の脱走があったことも報告されていた。
CPR内の死亡者数は2年間で6人。決して高くない数字だが、とにかく、入札を獲得し続けているというのは、とても不可思議ではある。
移民の受付システムを管理する外国人収容施設の入札は、より競争力のある大企業に飲み込まれており、イタリア領土全体にそれは存在するのが現状だ。

市場シェアを占有するために収益を先延ばしにして、競合他社をしのぐための積極的なマーケティングをしているというのが印象で、結局、非営利団体NGOを排除することを目的としているとも見える。
海上のNGO船舶に続いて、陸路についても不可解な権利の歩哨が横行しているようだ。


| 今後、考えられるイタリアの抱えるリスク 

現在決議で認可されているこの非情事態宣言が、パンデミックのいくつかの段階のように、移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。
自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ。

非常事態宣言は、送還の流動性を保証するものでもない。出身国との協定がなければ、送還は行われない。近年さまざまな国ですでに行われているように、出身国と協定を結ぶ必要がある。
移民増加現象の緊急管理は、中長期的なこの政策で構造的な解決策の基礎を築くことができるだろうか。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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