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ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態

iStock- JannHuizenga

iStock- JannHuizenga シチリア・ポッツァッーロ、本国送還のための拘留センターCPRで朝食を待っている難民の列。

| イタリアの入管収容施設:本国送還のための拘留センター(CPR) の実態

本国送還のための拘留センターCPR(=Centro di Permanenza per il Rimpatrio) は、日本の入国者収容所のようなものに近い、送還される前の拘置所で、移民を閉じ込める施設だ。
イタリアに滞在するための書類がないこと以外は、内部に収容されている人は誰も犯罪を犯してはいないが、依然とした拘留システムであり、その権利も意味もない刑務所である。

市民の自由と権利のイタリア連合の市民社会組織ネットワーク「ブラック ホール」によってCPRの2つの闇の側面がレポートされた。

イタリアには、本国送還のための拘留センターCPRは10箇所ある。

通常は1つのCPRには、400人未満の移民が収容されている。
送還される可能性が低い人々を拘束し、基本的生活のために必要な経費は、1日で40,000ユーロ(約590万円)以上で、2018年から2021年までの3年の合計は4,400万ユーロ(約64億9,600万円)x 10センター分が税金で賄われた。
実際には、10のセンターの維持費と、センターの内外を監視するために配置されている警察の維持費なども加算しなければならない。

移民の出身国との合意がなされず、何らかの事情で速やかに送還できない場合、長期収容となるが、法律で定められた最大滞在日数に達すると、ほとんどの人がこれら収容所から解放される。本国送還は50%のみ行わている。

2020年1月1日から2022年9月15 日までに本国強制送還が延期された半分以上は、チュニジア国民が関与しており、移民の主な出発国がチュニジアである理由は、移民に対する弾圧が行われているからであるという。
チュニジアのサイード大統領は「移民は国家転覆を目論む犯罪者である」と提言し、 国から脱出する移民を厳しく取り締まり、一斉強制送還にも踏み切ったという背景がある。
チュニジアの次に多い国順で、モロッコ、ナイジェリア、エジプト、アルバニア、ガンビア、アルジェリアが続く。

イタリアはこれらの国々とは、国家間の協定があるため最も簡単に送還できると報告書が強調しているが、正確にはこれらの送還の速さは、"深刻な権利侵害につながる"可能性がある。

実際、多くの場合、彼らは亡命を申請し、保護を正式に申請することが可能であるということは、彼らに全く知らされていない。
難民や亡命希望者から権利を奪うことで、イタリアの移民問題を何らかの形で解決できるだろうという考えなのだろうか。
少数派であるグループの権利の範囲を狭めることは、民主主義の原則と憲法に反することであると同時に、社会的紛争を助長し、領土内の関係の質を悪化させる。
人道上の亡命申請を取り消すことは、地方自治体が責任を負う不規則性と社会不安を助長するだけだ。
同時に、地方自治体の公共システムは解体され、その役割を大幅に削減し、民間システムに依存し支持することは、地方自治体の公共支出の増加にも直接つながっていくのではないだろうか。


・トリノの本国送還のための拘留センターCPR
亡命申請者のための個別の施設の欠如。窓なしの部屋で一晩のみの滞在可能な施設。

・ミラノ、トリノ、ローマのグラディスカ、パラッツォ サン ジェルバシオの本国送還のための拘留センターCPR
自律的に照明ライトをオンまたはオフにすることはできない。

・バーリの本国送還のための拘留センターCPR
シーツのないマットレス。部屋にはゴキブリがいる。ドアのない和式トイレ。 悪い衛生状態と質の悪い食品。

などである。

収監所で移民の世話をしなければならない文化仲介者、医師、心理学者などの人員は不足しているので、サービスの実行時間数もおのずと減る。
欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。

これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。

2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けている。

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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