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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

5月1日から導入されるイタリアの新省エネ法令

iStock-NicoElNino

| イタリアはロシアのガス依存脱却の戦略を加速中

元イタリア首相のエンリコ・レッタは、「ロシア産ガスを購入する者は誰であっても間接的にロシアへ戦争資金を提供していることになる。そのお金でウクライナの人々を虐殺した。私たちがロシアにお金を支払うのをやめなければならない。」と繰り返している。

ドラギ首相はそのエンリコ・レッタ氏の意見に同意しており、恐怖のエスカレーションとともに戦争の長期化に備え、欧州がロシア産ガスを遮断することを決定し、最悪のシナリオになった場合でもより多くの機会を与えることができるように、その役割を果たす準備をしておくべきであろうと述べた。

4月13日、イタリアはロシアのガス依存脱却の戦略を加速させた。

エジプトとの間で液化天然ガス(LNG)の形で年間30億m3に相当する量の供給に関する協定を締結した。また、アルジェリアとの間で国営企業であるソナトラックから年間90億m3の契約も締結された。
うち6つはパイプライン経由、3つは液化天然ガス(LNG)である。

これらのガスが現在イタリアで購入しているロシア産ガスに取って代わるものとなる。

イタリアは、北アフリカでの新しい契約により、ロシアのガス供給の大部分を比較的迅速に置き換えるための良い位置にあり、順調に計画は進んでいる。
ロシアのガスプロムは通常、290億立方メートルのガスをイタリアに販売しており、これは国のメタン輸入の40%に相当する。
アルジェリアとエジプトとの高度な協議で行われた契約の締結によって、ロシアがカバーしていたニーズの半分弱を置き換えることが可能となった。また、その時期は早くも来年の冬からだという。

さらに、イタリアは、アフリカ中南部、アンゴラ共和国とコンゴ共和国とも同様の協議と契約の締結へと着々とロシアからの依存脱却計画を進めている。
ドラギ首相はディマイオ大臣とガス供給の多様化戦略の一環として組織された任務でそれらの国々を訪問する予定であったのだが、4月18日、ドラギ首相がコロナウイルスに陽性であることが判明した。
無症候性であるが、出国中止・治療・隔離が開始された。
ディマイオ大臣とシンゴラーニ大臣が政府を代表し4月20日と21日にアンゴラ共和国とコンゴ共和国へ出発した。

再生可能エネルギーについても加速しており、すでに次の閣僚会議でそれが新しい設置のための認可を得ることができるだろうと発表している。


| 再生可能エネルギーのスプリント

潜在的なメリット

ロシアからのエネルギー供給を断ち、エネルギー消費を削減することは、戦争を止めさせるのに役立つだろうか?

いくつかの電力会社や資源エネルギー調査会のデータによると、極端な例で言うと、家庭用エアコンを完全にオフにすると最大100億立方メートル節約でき、暖房ヒーターをオフにすると最大20億立方メートルを節約できるという。
ドラギ首相が、イタリア国民に向け「平和とエアコンを物々交換しないか」というジョークで代替案を与え、政治的論争を引き起こした。

ウクライナでの血なまぐさい紛争によって引き起こされているエネルギー危機の影響を回避するために、今すぐ行動しなければならない対策であり、強ち冗談でもなく笑い事でもない真剣な代替案だった。

首相は、緊縮財政という言葉を口に出さずとも、非常に深刻な状況を心配しつつ、「国民にとって痛みを伴うような劇的なテーマであり、厳しい改革を推進していかねばならない。」と率直に主張し、政府の省エネ具体策「サーモスタット作戦」の導入についてと国民にその理解を要請した。


| 冬の暖房は最大19℃まで、夏のエアコンは27℃以上

政府が可決した"エネルギー法令"に関する議論の中で、3月中旬に環境および生産活動委員会によって改正案が予見されてあった。
その後、五つ星運動(M5S)政党によるエネルギー法令の改正は、環境および生産活動委員会で承認された。

「2022年5月1日から2023年3月31日まで、各建物ユニットの個々の部屋で測定された公共建築物の加重平均気温は19℃+許容誤差2度を超えてはならず、27℃から許容誤差2度を引いた値を下回ってはならない。」

というもので、行政(官公庁)および学校、市町村の​​ラジエーターおよびエアコンの設定温度についての厳格化を課した法令である。
診療所、病院、ナーシングホームには適用されない。
修正案を提案した五つ星運動(M5S)政党の副官アンジェラ・マーシは、「ガスの必要性を減らすのを助ける簡単な方法だと言います。行政が良い模範を示し、廃棄物を削減し、市民に消費の合理化を認識させるのが最良である」と述べた。

○学校
ブルネッタ行政大臣は知らされていなかったが、「責任の観点から賛成している」と、この措置について前向きな意見を述べた。
伊大手新聞社コリエーレ・デッラ・セーラとのインタビューでは、「"部屋を出るときは電気を消しなさい"と言った母のことを思い出します。特に学校など100万の公共施設の屋根にソーラーパネルを設置することを進めていきたいと思います。ロシア産ガスへの依存を解決することはできないかもしれませんが、教育的価値は非常に高くなります。」と述べた。

○市町村の照明オフ
エネルギーの消費量を削減するための絞り込みの一環として、自治体の電力消費量を削減するための法令が制定される可能性もある。
これは、街灯の数が減ることを意味する。
政府は、街灯の点灯回数と点灯時間を制限する規則を含めることを検討しており、私有地マンション内の照明ライトについても論理的には同じで、共有エリアのライトの点灯時間を遅らせるなども検討されている。


| 規則違反を取り締まるのは誰?

しかし、誰がコントロールするのか?

違反を取り締まるのは難しいと思える。
規則違反には500ユーロ(約7万円)から3000ユーロ(41万6千円)の罰金が科せられるというが、建物ごとにチェックを行う必要があるのだろうか。
これは行政にとって複雑な仕組みであり、その措置がイタリアの企業や家庭にまで拡大された場合は、さらに複雑になることだろう。

個人住宅:現行のルール
民間の一般家庭での室内温度を1度下げると、すでにそれだけでガス消費量を約7〜8%節約できるという。
しかし、現在施行されている規則はどうだろうか。
個人宅では、イタリアが分割されている6つのゾーンに基づいて、ラジエーター用の特定のスイッチオンバンドを使用して、冬の気温が20度を超えないようにする必要がある。
大統領令1993年8月26日のDPRn.412は、省エネを目的とした建物の熱システムに関する規制であり、イタリアの気候区分を導入されている。
たとえば、北イタリアのミラノとボローニャでは10月15日からしか暖房をつけてはいけない。南イタリアのパレルモとカターニアでは12月1日まで暖房はつけられない。
この規則を尊重しない人には、最高3000ユーロ(41万6千円)の罰金が科せられるほどだ。

関連記事:【イタリア事情斜め読み】「対ロシア制裁におけるイタリアが被るダメージ」


| 2月16日をイタリアの「省エネの日」にする

もう一つの改正は、2月16日を"省エネと持続可能なライフスタイルの国民の日"として確立するというものである。

環境および生産活動委員会でエネルギー法令を検討する際に、エネルギー法令の発案者であり、五つ星運動政党のグループリーダーであるアントニオ・フェデリーコが「廃棄物の削減、共有行動の実施、持続可能なライフスタイルの普及を通じてエネルギーと資源の節約の文化を促進する」を宣言した日を記念すると。

-エネルギーの価格と再生可能エネルギーの可能性について、2つのガイドラインに取り組むことを目指す。

1つ目は、家計への負担減と企業の生産能力を伸ばす。
2つ目は、一部のセクター、特に再生可能エネルギープラントの認可手続きをさらに簡素化する。

これら2つの目標は、どこの政党から出たものであるかなど与野党関係なく、同じ問題に注意を向けて統合することが重要点であると、五つ星運動(M5S)政党がしばらくの間主張していた。

日本は、1973年と1979年に起こったオイルショックを契機に省エネルギー法エネルギーの使用の合理化等に関する法律)が1979年に制定された。歴史の教訓から様々な省エネルギー政策に取り組んできた日本は、先進7か国の中でもイギリスに次ぐエネルギー消費効率が世界最高水準である。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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