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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

AUKUSの原子力潜水艦についての発表

画像:ISerg-iStock

AUKUSとは2021年9月に発足したオーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国による軍事協定です。これにはインド太平洋地域で安全保障上の強化に関連する事項、オーストラリアの原子力潜水艦配備、サイバーテクノロジー、AIテクノロジーの強化などが含まれています。

オーストラリアは当初フランスから潜水艦を購入する予定でしたが、急にこの契約を破棄し、アメリカから購入することに変更しました。この変更はフランスとの関係悪化をひきおこし、オーストラリアは契約破棄に伴う罰金を支払う必要が生じました。

2023年3月13日にAUKUSの首脳会合が米カリフォルニア州サンディエゴで開かれました。この会合で、次世代原子力潜水艦艦隊を創設する計画の発表がありました。この計画では2030年代前半までにオーストラリアにアメリカが原潜を提供することが含まれています。原潜の技術は高度な機密を伴い、アメリカが原潜を外国に供与するのはあまりないことです。オーストラリアは非核保有国のため、核兵器は搭載しない計画です。

今回の潜水艦計画で、オーストラリア政府は何千もの新規雇用が生み出されるだろうと期待しています。この新しい雇用に関連した大学などでのコースも始まるようです。

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画像:LockieCurrie-iStock

計画ではまずオーストラリア海軍の隊員がイギリスとアメリカの潜水艦基地に派遣され、潜水運用に必要なスキルを身につけます。2027年からは、アメリカとイギリスがオーストラリアの基地に少数の原子力潜水艦を配備する計画です。オーストラリアは2030年ごろに、米ヴァージニア級原子力潜水艦3隻を購入する予定です。また3か国すべての技術を用いた新しい原潜SSN-AUKUSを設計・建造することが計画されています。

今回一番驚いたのは朝の通常のニュースの替わりにサンディエゴでの発表をオーストラリアのテレビ局が生放送で中継していたことです。オーストラリアにとって今回の原子力潜水艦の計画は歴史的な決断です。いろいろ期待がありますが実際に新しい潜水艦が配備されるのはまだかなり先です。またかなりの予算が必用なため国内でも、疑問視する声もます。オーストラリアとしては中国との関係の回復も図りたい意図もあり、まだこれからどうなっていか不透明な面もあります。





参考
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/010500492/
https://www.bbc.com/japanese/64936219
https://www.theguardian.com/world/2023/mar/14/what-is-the-aukus-submarine-deal-and-what-does-it-mean-the-key-facts

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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