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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

こんなの日本にもあったらいいのに・・と思うフランスの若者への国際進出支援のシステム

若者たちの未来は国の未来、若者たちにより多くのチャンスを!  Pixabay画像

その効果が目に見えて、てきめんにすぐに表れているかどうかは別として、フランス政府が次々と発表していく政策の中には、若者への支援や、サポート等が定期的に登場し、マクロン大統領の口からも、「フランスの未来を担っていく若者のために・・」というような言葉が度々、出てきて、なるほど、それがドンピシャにはまるかどうかは疑問に思うこともあるとはいえ、若者への教育システムへの補正や就職支援などの新しい政策が試みられ、フランスでは、少なくとも、国の未来をしっかり考えて動いているんだということが感じられます。

フランスで育って、フランスで教育を受けてきた娘が日本で就職して、1年半近くが経ちましたが、日本が大好きで、毎年、夏休みには日本に連れて行っていたとはいえ、日本で生活するのは初めてのことで、彼女が一人で日本で生活していくことが親としては、想像もつかずに、少々、心配なこともありましたが、1年半が経って、気の合う友人もできて、忙しく、楽しそうに日本での生活を満喫している様子に少しホッとしています。

日本語は、小さい頃から必死で教えてきたため、大概、言葉には不自由はしていないものの、フランスで育った彼女にとっては、やはり、彼女にとっての母国語はフランス語、そして、彼女の考え方や生活の仕方などは、どちらかというとフランス人寄りのもので、当然、日本でも彼女の周囲の友人には、同年代のフランス人が少なくないようです。それはそれで、日本で生まれ育った私がフランスで生活していても、日本人とも関わりがあるのと同じことです。結局、親子そろって、逆バージョンをやっているんだな・・と苦笑しています。

そんな彼女の日本での友人の中に、現在、日本のフランス企業で働いている子がいて、彼女が利用しているフランスの若者への国際進出サポートのようなシステムの話を聞いて、こんなこともフランスはやっているのか?と思い、こんなシステムが日本にもあったらいいのに・・と思い是非、ご紹介したいと思いました。

V.I.E(Volontariat International en Enterprise)国際企業ボランティア

この V.I.E(Volontariat International en Enterprise)国際企業ボランティアというシステムは、ボランティアという名前がついてはいるものの、ちょっと日本で言うボランティアのニュアンスとは違って、しっかりと報酬も伴うもので、また、このシステムを利用する若者にも、若者を採用する企業側にも双方に大いにメリットがあるシステムで、フランスの法律に基づいて、企業の国際進出・発展を促進することを目的としています(2000年に正式に法律で制定されているシステム)。その多くは自動車会社、銀行、製薬会社、IT分野などが占めていますが、何も大企業に限ったことではなく、中小企業に関しても、資格基準さえ満たせば、このシステムを採用することができます。

これは、海外進出しているフランス企業、パートナーシップ契約により、フランス企業と提携している外国企業やフランスと協力している外国組織が該当します。つまり、これらの海外にあるフランス企業でフランスの若者が活躍する機会を拡大、促進している国家的なシステムです。

このシステムに登録することができるのは、18歳から28歳までの若者に限定されているので、フランスが将来も海外で活躍していくための人材育成の意味も含んでいると思われ、この契約期間は6ヶ月から最大24ヶ月と期間限定ではありますが、約半数は、満期終了後も受け入れ企業に留まり、仕事を続けていると言われています。これに応募するには、基本的には、ある程度以上の現地での言語のレベルが求められますが、後は、受け入れる企業との直接交渉になります。

この契約期間中は、毎月、固定給が支払われ(国によって固定給は異なる)、全世界共通ベース760.57ユーロに現地の生活水準に準じた金額がプラスされます。ちなみに日本(東京)の場合は、月額 2085ユーロがプラスされ、合計2846ユーロ(約44万円)が支払われ、それプラス、企業によっては、住宅手当などの追加の手当などもあり、同年代の日本人の平均月収と比べても、決して悪くない報酬を受けられるうえ、これらは、フランスでの収入となるために、海外(現地)においても、また、フランスにおいても、所得税が免除されるという恩恵に預かることができます。また、この間の健康保険などの社会保険に関しても、本人およびその扶養家族がカバーされます(民間保険会社が委託を受けフランスの社会保険を置き換える仕組みになっている)。

この報酬(給与)に関しては、所属する企業から支払われますが、企業側にとっても、この給与に対する国への社会保障費などの税金が免除されます。

そして、フランス人がやたらとこだわる年金についても、この期間の年金のポイントがきっちりと換算されるようになっています。

また、このシステムで若者の人材を受け入れる企業にとっても、給与に関わる税金の免除だけではなく、VIE運営のための財政援助を受けることができ、また、Bpifrance(企業発展のために国が企業のために手を差し延べる組織)から、国際成長融資などの恩恵を受けることが可能となり、何よりもその企業を担っていく人材発掘と育成の大きな足掛かりとなるもので、双方ともに WinWinのシステムで、実際にこのV.I.E.のシステムを利用した企業は、79%の売上高の増加が見られているというデータも出ています。

若者の未来は国の未来

つまり、娘の友人は、このシステムを利用して、日本にあるフランス企業で働いているわけで、このV.I.E.契約満了後もその企業で働き続けるつもりであると話しているそうです。海外転勤という話は日本の企業でもよく聞く話ですが、その一歩先を行っているというか、このシステムを利用して、現地の国々の文化や生活様式をより理解しているフランスの若者に海外で活躍できるチャンスと恩恵が与えられ、ある意味、若者の人材育成を担っていると同時に、その企業の発展にも大いに貢献していると思われます。

逆に、もしも、日本にもこのようなシステムがあったならば、例えば、フランスに進出している日本の企業なども、フランスの文化(良い面でも悪い面でも)をよく理解している日本の若者にも活躍の場が与えられ、より円滑に事業を拡大していくことが可能になるかもしれません。

とかく内向きな国と言われがちな日本にも、こんなシステムがあったらいいのに・・と切に思います。

娘が日本で知り合った日本人の友人たちと話す時、フランスの大学や高等教育機関の学費の安さに日本人は驚愕すると言っていましたが、なにも、学費が安いのは、教育にお金がかからないわけではなく、その分を国が負担しているということで、フランスという国は子供の教育に、かなり投資しています。それでも、出来る子には、よりお金を出す・・というようなところはあるものの、最近では、低所得層家庭で、いわゆる落ちこぼれに近いような若者に対しても2022年に「青年エンゲージメント契約」というシステムをスタートさせ、いわゆるドロップアウトしてしまった16歳から25歳の若者に対して、登録さえすれば、週に15時間から20時間のサポート(職業訓練等)を受けて、就職することができるように、月額最大500ユーロの支援金をもらいながら、学びなおすことができるというシステムをスタートさせています。

マクロン大統領は、この青年エンゲージメント契約をスタートするときに、「未来を描く全ての人々が仕事に就き、自分たちの生活を築くことは重要なことで、若者のそれぞれのプロジェクトを達成するために国家はある!」という少々、聞いている方が気恥ずかしくなるようなことを語っていましたが、内容はいちいち、ごもっともな話。

日本という国にも、日本の未来を担っている日本の若者のために、そして、日本の未来のために投資してくれるような、こんなシステムがあったらいいのに・・と思うのでした。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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