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南仏の国際機関から考える

大前敬祥|フランス

分断に向かう社会における国際協調の意義

ITERマシン組立開始式典にて (著者撮影)

去る7月28日、世界7極35カ国で人類のエネルギー問題解決へ向けて核融合実験炉の建設を進めているITER計画において大きなマイルストーンがあり、世界各国首脳が祝辞を寄せました。(記事はこちら:https://www.iter.org/newsline/-/3480

今日は、その意味について考察したいと思います。

この数年の国際関係を見てみると、基本的には統合よりも分断に向かっている大きな流れがあります。米国におけるメキシコ国境の壁の話や人種間の問題、欧州におけるブレグジット、中国における香港の特別な位置を巡る事例など、全てを網羅的に記すことはできませんが、日本の主要メディアに取り上げられる粒度の事柄だけでも数が多く、皆様にとっても馴染みのある話題だと思います。

また海外の話だけに止まらず、日本国内においても格差の拡大からくる様々な社会階層の分断は、おそらく20世紀後半に比べて多くなっているというのは、どのような立場の方であっても一致する意見ではないでしょうか。

振り返ってみると、有史以来人類は分断と統合を繰り返してきたと思います。近い「歴史」であれば、私の現在住んでいる欧州連合(EU)は、まさに一つの世紀に2度の大規模な戦争(第一次世界対戦と第二次世界大戦)を経験し、そこから「戦争のない欧州」を実現すべく欧州統合の道を歩きはじめました。そこには、「統合は争いを無くす」ことが出来るという、乱暴かもしれませんが極めてシンプルな考え方がベースにあるとも言えると思います。

日本の歴史を振り返ってみても、例えば19世紀より前の国内は「藩」と呼ばれる概念に「分断」されていました。そして更に前の南北朝~室町~戦国期においては国内各地が基本的に多くの「国」に分断されており「戦争し合う」関係性でした。それが徳川政権による統一~明治維新を経て今日まで維新の際の戊辰戦争を除き「日本国内では大規模戦争は起きていない」わけですので、まさに「統合は争いを無くす」ことが実証されているのではないかと思うわけです。

そういった歴史から物事を俯瞰的に捉えると、米ソ冷戦終結にあたり当時の米国レーガン大統領とソ連ゴルバチョフ書記長のによる超大国ジュネーヴサミットでの会談の際に構想された「ITER計画」は、各国が独自に人類の夢の次世代エネルギー源となる可能性のあるフュージョン(核融合)開発を目指すのではなく、「国際協調」で共に実現を目指すという「統合(ゴールを共にし協調して向かうという意味で)」の象徴的なプロジェクトであると言えます。

構想から30年以上がたつ今年2020年、奇しくも「分断」のトレンドが加速している社会情勢において、ITERが核融合実験炉の組立開始を宣言し、世界経済の80%を占める大国の指導者達がそれを祝うメッセージを寄せるという出来事は、「短期的な政治アジェンダとして分断はあっても、長期的には人類は協調することで地球規模の課題を解決する必要がある」という強いメッセージが込められています。

ですから私達は現在見えている分断を恐れることなく、一人ひとりが他者との違いを認め尊敬し、協力して課題解決をすることで、また歴史はよりよい「統合」へ向かっていくのではないかと考えています。

 

Profile

著者プロフィール
大前敬祥

「地上に太陽を創る」人類史上最大の国際プロジェクトITER計画の最高戦略責任者 | 世界7極(日欧米露中韓印)で国際機関―ITER機構を南仏プロヴァンスに設立、人類のエネルギー問題解決の為「核融合炉」を建設中←米系戦略コンサルティング←日系情報通信(インド&中国駐在)| 専門領域はグローバル×テクノロジー×経営戦略 | 香港科技大学(HKUST)ビジネススクール卒 | @takaomae

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