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アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

アルゼンチンで学んだ「人間力」とは?

(istock-Rudzhan Nagiev)


「人間力」、スペイン語ではCapacidad humanaなどと言いますが、人間力のある人とはどのような人のことを指すのだろう、とふと思い日本語でインターネット検索してみました。



* 社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力
* 人間の筋肉が発揮する仕事率

(Wikipedia 「人間力」)

・「知的能力的要素」「社会・対人関係力的要素」「自己制御的要素」の3つで構成されるものとされています。

(内閣府・人間力戦略研究会報告書より



この他、検索上位には「仕事」に関する人間力について言及しているWebサイトがほとんどでした。

こうして見ると、日本では一般的には、人間力のある人=社会の一員としてバリバリ仕事が出来る人、などが主であるということがうかがえます。


iStock-1387386580.jpg
(iStock-emma)




アルゼンチンという国にきて感じたカルチャーショックの一つは、人生の中で仕事が最優先事項ではない、ということです。勿論人にもよりますが、多くの人が人生で何が大事か?という問いに「仕事は一番には来ない」と言います。



ここでの人生の優先順位は、まずは自分の健康、その次が家族や周りの大切な人たち、その次が仕事、というのが一般的です。「人生を楽しむために、なるべく無理をしないで働ける方法を探す」というのが基本理念かとも思えるようなラテン国家、アルゼンチン。

必要以上に自分を犠牲にしてまで人生を仕事に捧げる、ということはありません。無理な時は無理、頑張らない。

「社会の一員として、社会の為に」働くという考え方はゼロに等しく、大事なのは自分と家族。有給などもどんなに国が大変な時だろうと、会社がトラブルに見舞われている時だろうと取りたいときに取れるだけ取り、夏と冬のバケーションも欠かしません。

その為、有能な人材や特定の領域で高みを目指したい人はアルゼンチンから出て行ってしまう、というのもよく聞く話です。



次に、「人間力とは?」という質問を、同じようにスペイン語で検索してみました。アルゼンチン及び南米圏のwebページで、検索上位に上がってきたものの一例です。

Inteligencia: razonamiento (合理的な知性)
Voluntad: accionar humano (実行に移す意思) 
Persona humana: ser mas afectivo (情緒的で愛情深い人間らしさ)

(アルゼンチン・サンルイス州 La punta大学, Capacidades Humanas y Afectividad | Formación Ética y Ciudadana (ulp.edu.ar)

En concordancia, las Capacidades humanas son entendidas como las acciones que se cometen para así lograr un estado de bienestar y con ello lograr un estado de buen vivir.

したがって、「人間力」とは、幸福な状態を実現するために行う行動、つまり「良い暮らし」を実現するために行う行動と言えるでしょう。

(コロンビア・La Salle社会経済科学大学



統計などではなく一部を取り上げただけですが、この検索結果の違いだけでも、南米圏の文化と日本文化の違いが垣間見えてきます。

社会よりももっと個に向けられていて、「幸せ」や「愛情深さ」というワードが挙がるのは、南米らしさのひとつかなと思います。

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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